M.K通信 (1)ゆで卵からヒヨコが生まれる???

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北朝鮮の一方的な非核化を追求する、米国の軍産勢力と代弁者であるネオコンを中核とする強硬派の不穏な行動が日増しにエスカレートしており、朝米共同声明の履行に赤信号が灯っている。

▲「カンソン」というところでウラン濃縮が秘密裏に続けられている等々の稚拙なフレームアップ▲核施設の申告、核弾頭の引き渡し要求報道などに見られる一方的な非核化要求▲スポーツ競技のユニホームにまで至る制裁強化への動きなどなど。

これらの動きの特徴は①歴史的な朝米共同声明をないがしろにするもので、トランプ大統領の意思に反すること②トランプ大統領が朝米首脳会談を準備する過程で否定した「リビア方式」を執拗に追及していることーにある。

安全保障の提供と朝鮮半島の完全な非核化を実現するために、朝米共同声明は①新たな朝米関係の樹立②恒久的で強固な平和体制の構築③朝鮮半島の完全な非核化④戦争捕虜および行方不明者の遺骨発掘と送還―の4項目に合意したことは周知の事実。

朝米関係の樹立と平和体制の構築については無視したまま、「朝鮮半島の完全な非核化」を「北朝鮮の完全な非核化」に勝手に置き換え、北朝鮮の一方的な非核化を叫ぶ米政権内の強硬派の主張が、いかに共同声明の合意からかけ離れたものであることは一目瞭然であろう。 特にトランプ大統領が約束している朝鮮戦争の終戦宣言に否定的立場を示し、非核化の先行を唱えていることは安全保障の提供に重大な疑義を生じさせるものだ。

「先非核化」論は武装解除を先行させカダフィ政権を崩壊させた「リビア方式」そのものだ。

軍事的に脅威を与え経済制裁で圧力を加え、非互恵的で一方的な要求を突きつけ「明るい未来」を囁きながら核開発の放棄を迫ったのは、ネオコンがカダフィ政権に対してとった手法だ。 その目的は、ネオコンが「強硬関与」の原則として掲げた「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)」によって武装を解除させレジームチェンジの前提を整えることにあった。

米国はカダフィ政権が核放棄に合意した後数年かの間に、反カダフィ不満分子を糾合、反政府勢力に育て、軍事訓練を施し、武器と資金を与え内乱を起こした。 カダフィ政権が反乱の鎮圧に軍を動員したのは当然のことであったが、米国はそれを「人権侵害」と非難、NATOをして軍事介入、カダフィ政権を崩壊させた。 リビアは米国によって明るい未来を閉ざされ、今も分裂と紛争に明け暮れる悲惨な状況に追いやられている。

現在、核施設の申告、査察など、一方的な非核化を要求、終戦宣言などの互恵的措置を拒否する一方、「ベトナム方式」による「奇跡」を云々しながら「明るい未来」の甘言を繰り返す米当局者の言辞は、「リビア方式」を思い起こさせるに充分だ。

朝米関係をめぐる一連の不穏な動きは、リビアでの成功体験に酔いしれ、朝鮮半島での再現を策す、トランプ政権内に巣くい、角界に布陣するネオコン強硬派の愚行が招いているものだ。

クリントン政権の融和政策を排し「強硬関与」を唱え、CVIDをその原則に掲げたブッシュ政権、「強硬関与」を引き継いだオバマ政権の対北朝鮮政策が失敗を重ねたのは誰もが知るところ。

米歴代政権の傲慢で無謀な「強硬関与」政策が、水爆に、米本土を射程の収めるICBMを備えた「国家核戦力の完成」を招いたのが現実だ。

歴史的な朝米首脳会談は信頼の構築を通じて核で向かい合う極端な敵対関係を収束させ新しい朝米関係と朝鮮半島と世界の平和と安全、繁栄の道を切りひらくものだ。

これに逆行する米強硬派の動きは過去の失敗の教訓を学ぼうとしない愚行に過ぎない。

北朝鮮外務省は8月9日スポークスマン談話を発表し「ゆで卵からヒヨコが生まれるのを待つ愚かな行為」と指摘した。

狂気じみた主張を繰り返すボルトン補佐官はさておき、二度と失敗を繰り返さないと公言しているポンペオ国務長官が過去から学んだ教訓とは一体何なのか。(M.K)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。