トランプ大統領がポンペオ国務長官の訪朝を電撃的に中止したのは、アメリカ政府内で対朝鮮強硬派(ネオコン&リベラル・ホーク)と穏健派(トランプ派、非主流新興勢力)との葛藤の激化によるものと見られる。
アメリカの「VOA」は24日、トランプ大統領がポンペオ訪朝中止の理由として挙げた「朝鮮の非核化」進展問題で、大統領がどの部門で不十分かを言及しなかったと報道する一方で、「米国務省が、朝鮮の核活動の中断の兆しがないという国際原子力機関(IAEA)の観測が正確であると評価した」と伝えた。 これはいつもの「朝鮮は約束を守らない」という理屈だ。
アメリカは、自らはシンガポール首脳会談合意を全く守らないまま、朝米交渉が自分たち意のままにならない原因を朝鮮(と中国)のせいにして責任を押し付けている。 つまり、自分たちが負うべき責任をそっくり被害者に被せて居直っている。 典型的・伝統的な西側勢力のやり口だ。
だが、今回の電撃キャンセル理由については、米国政府周辺からも異を唱える声が上がっている。
VOAは「トランプ大統領がポンペオ国務長官の訪朝計画をキャンセルした理由は、もう一回、手ぶらで帰ってくることを懸念したためだと、元官僚が診断した。米政府内で意見が分かれたり、あるいは一種の戦略だとの分析も出ている。」と伝えた。
元米国務省非拡散・軍縮担当特別補佐官であるロバート・アインホーン氏は、「ポンペオ長官が再び朝鮮を訪問したにもかかわらず、手ぶらで帰って来たならば、政治的にあまりにも恥ずかしいとの判断をしたものと見える。 朝鮮は現時点で、ポンペオ長官に多くのことを渡す準備ができていないようだ。 前回のように朝鮮を訪問した後、手ぶらで帰ってくる状況を防いだのは賢明な選択だった」と分析した。
アインホーン氏は、前回訪朝で提示した提案が拒否されたため、アメリカは新しい提案を持って行かなければならないが新提案の内部合意を得られず、訪朝前の水面下交渉でも、妥協点を見出せなかった可能性があると推測。 また、朝鮮が核とミサイルプログラムを継続しているという「十分な証拠」があり、このような状況で、金正恩委員長が合意を守らずにいると主張することで、問題の責任を朝鮮に転嫁する方針を固めた可能性があると診断した。
マイケル・フックス前国務省東アジア太平洋次官補は、「今回の決定を、トランプ大統領が朝米首脳会談を一回キャンセルした事例と比較すると、当時のように今回も、ジョン・ボルトン国家安保補佐官など政府内の一角で、ポンペオ長官の訪朝に反対する意見が出てきた可能性がある。」と分析した。
また、今回の訪朝で大きな進展の達成は難しいとの報道に接した後、トランプ大統領が状況を憂慮した可能性、あるいは、過去に会談をキャンセルした後、すぐに再び会うことにした戦術を再利用する可能性があると述べた。
フックス氏は、トランプ大統領が金国務委員長に「暖かい安否」とすぐに会いたいという言葉も伝えたので、強硬政策に旋回するようには見えないとして、トランプ大統領が描く対朝鮮関係の改善、ひいては正常化という大きな枠組みは変わらず続くとの分析を示した。
一方、クリストファー・ヒル前国務次官補は、「状況が悪化するようだ」「米国は中国との会合を開くなど、域内の戦略を構想するために真剣になる必要がある」と主張した。 米国が朝鮮との問題を解くためには、より真摯な姿勢を持って朝鮮や中国など周辺国との関係を合理的に解いていくべきだというアドバイスだ。
事実、これまで朝米関係が、シンガポール朝米首脳会談合意の内容に沿って履行されなかった理由は、米国内の強硬派と穏健派の葛藤と「目に見えない力」(軍産複合体と大手メディア連合)の巧妙な工作によるものであり、これについては朝鮮も絶え間なく指摘、問題を提起している。
いずれにしても、両国首脳が合意した以上、アメリカは共同声明を履行せねばならない。トランプ大統領の決断とリーダーシップが問われる。
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