マティス発言、対朝鮮強硬派に対するトランプ流の牽制か

アメリカのマティス国防長官が28日(現地時間)、米韓合同軍事演習について「現段階では、これ以上中断する計画はない」と発言、注目を集めている。

マティス氏の発言は、ダンフォード合同参謀議長と共に行った記者会見の場で、「朝鮮が非核化を行っていないとの最近の報道に照らし合わせて、合同軍事演習を再開する時では?」との問いに答えたもの。

マティス氏は前述の発言を前提としながらも、「我々は交渉がどのように進んでいるかを見て、どうすべきか未来を読み取るだろう」「直ぐには答えを出せない。 交渉がどう進むか見よう。」と答えた。

要は、来年度の「乙支フリーダムガーディアン」などの米韓合同軍事演習についてはまだ計画が決まっておらず、米朝交渉の進展具合と連動するとの見解だ。

マティス長官はまた、「来年に訓練が再開されれば、それは「挑発的措置」として見るべきか」との質問に対し、「そのような質問に答えること自体が、交渉に影響を与えることになりかねない。 外交が進展することができるようにしよう。 我々は外交官を下支えする。」と応答、交渉を決裂させないために言葉の選択に慎重を期した。

マティス長官の発言を総じて見ると、日米メディアが報道するような「演習の再開を示唆して朝鮮に圧力を加える」ような性質のものではない事が解る。 あくまで朝米交渉の進展を見守って対応するというものだ。

これは本来、「生粋の職業軍人」としてタカ派に分類されるべき国防長官が、極めて冷静かつ理性的に朝米交渉を外交問題として捉えていると言うことであり、ボルトン国家安保担当補佐官などに代表されるネオコンやリベラルホークの「暴走」に対する牽制の意味合いを持つ。

マティス長官は5月にも、朝米首脳会談に関して責任も取らずに無責任な発言をする者が多すぎると苦言を呈し、その問題は責任ある担当者の手に委ねると応えている。

そもそも、シンガポール朝米首脳会談での合意に沿って、「新しい朝米関係」や「朝鮮半島の非核化」に向けて段階的に措置を履行しているのは朝鮮側であり、アメリカ側では旧来既得権勢力の抵抗が激しく、米韓合同軍事演習の中止ぐらいしか措置が履行されていない。 朝米合意は「同時的・段階的」に履行すべき原則からして、アメリカは次段階の措置として、シンガポールでトランプ大統領も発言したとおり、終戦宣言に応じるべきだ。

ましてや、今回のポンペオ国務長官の訪朝中止はアメリカ内部の葛藤激化が原因であり、トランプ大統領もそれを理解した上で、自身のTwitterで発表している。 でなければ、「…私は金委員長に最も温かい安否の挨拶と敬意を伝えたい。 私はすぐに彼に会えることを楽しみにしている!」とはお世辞にも言わないだろう。 朝米交渉は冷静に注視する必要がある。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。