「朝鮮が非核化に向けて取った重要な措置を考慮し、3カ国はUN安保理がこれに合わせて対朝鮮制裁措置に対する再検討に着手しなければならないと考える」
10日モスクワで行われた、朝鮮と中国、ロシアの外務次官会談で発表された共同声明の一節だ。
朝中露3ヶ国が共同で、朝鮮に対する「UN経済制裁」の解除を求めたのは初めてだ。 それまで、中国とロシアが個別に制裁緩和の必要性に言及したことはあったが、3国がそろい踏みで「一方的な制裁に反対する共同の立場を確認した」と表明した意味は大きい。 UNの経済制裁に対し「やむなし」の立場を取ってきた「朝鮮の伝統的友邦」である中露両国が、朝鮮の立場を明確に支持したからだ。
朝中露3国は共同声明で「朝鮮半島の非核化と平和体制構築のための3カ国の意志を確認した」「こうしたプロセスは相互信頼構築を基本目標にし、段階的かつ同時的に進められなければならず、関連諸国の相互措置が伴われるべきという認識を共にした」と強調した。
また、「朝鮮半島問題は、平和的かつ政治外交的に解決する以外、代案がないという立場を共有した」「関係国の対話推進の努力を高く評価し、相互の憂慮の解消と関係正常化のための朝米・南北会談に支持を表明する」とした。
朝鮮、中国、ロシアの3ヶ国は、朝鮮半島の緊張緩和のため、韓国と米国を交えた関係国の5ヶ国協議が必要との認識で一致したという。
注目すべきは5ヶ国協議すべき「関係国」。 登場するのは、朝鮮、中国、ロシアそして、韓国とアメリカの5ヶ国だ。 そこに日本の国名はない。 お解りだろう、日本が「蚊帳の外」にあるという厳然たる現実を。
先にあげた関係国は友好関係、敵対関係にかかわらず、「新たな朝鮮半島関係」を構築するため、皆一様に朝鮮と緊密な接触と意思疎通を図ろうとしている。 何らかのレベル・形で接触・対話・交渉をしている、それが外交だからだ。
朝鮮と韓国の南北間では今年に入って、4月、5月、9月と3回の首脳会談が行われ、民族自主の精神を内外に示すとともに、各分野での交流協力が加速化している。 「9月平壌共同宣言」は事実上の「南北終戦宣言」となった。
中国は、3月、5月と立て続けに朝中首脳会談を行った以後、双方の様々な代表団が往来している。
ロシアは、外相や国会議長が朝鮮を訪問、両国首脳同士が互いに自国への訪問を打診し、親書・祝電が行き交っている。
「不倶戴天の怨讐」であったアメリカも、ポンペオ国務長官の4回の訪朝をはじめ、朝鮮との間で実務者レベルの接触・対話が継続されており、6月シンガポールの朝米首脳会談に続き、11月中に2回目の首脳会談が行われる方向で調整が進んでいる。 2回目の朝米首脳会談は「新しい朝米関係樹立」への画期的な転機になると見られている。
しかし、日本にはそれがない。 日朝間は完全なる没交渉と言っても過言ではない状況だ。
朝鮮に対し、「対話による問題解決の試みは一再ならず、無に帰した」「必要なのは対話ではない。圧力」「核、ミサイルの開発に必要な、モノ、カネ、ヒト、技術が、北朝鮮に向かうのを阻む」と言い放ち、「独自制裁」を科してきた日本。
「私も、北朝鮮との相互不信の殻を破り、新たなスタートを切って、金正恩委員長と直接向き合う用意があります」(安倍首相)とは言ってみても、「関係国」を通じて朝鮮に伝えてもらう事だけ。 実際にはそれすらも怪しい。 自ら行動を起こそうとする意思が見受けられない。 それでは「いま決まっていることはまだ何もありません」となるしかない。
朝鮮を巡る「新関係構築」から完全に取り残される形になった日本。 かつては朝鮮の核問題をめぐる「6者協議」の一角にあったが、今では、半島和平快しとせず「新たな朝鮮半島関係の構築」から締め出されることに。 「日本は100%米国とともにある」のではなかったのか? そのアメリカさえ、そのトップが朝鮮とは「非常にいい関係」だというのに。
現況は「蚊帳の外」を通り越して、もはや「外交的失態」だろう。(Ψ)
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