アメリカ中間選挙が6日行われ、上院で与党共和党が過半数の議席を維持、下院では野党民主党が巻き返しを図り、過半数の議席を獲得した。
中間選挙は時の執政者に対する中間評価の意味合いがあると言われ、今回の選挙結果はトランプ大統領の施政2年に対するそれとして注目された。 選挙結果は選挙前の予想通り、上院下院の「捻れ現象」となった。
米国メディアは挙って、これを以てトランプ大統領の立地が狭まり、強権発動が容易でなくなって弱体化するとの「希望的憶測」を流している。 そして、「民主主義的」政治風土を取り戻し、トランプ大統領が「レームダック化」するかのように喧伝している。 果たしてそうだろうか。
トランプ大統領は今回の中間選挙を「今宵はすばらしい成功だった。みんなありがとう!」「素晴らしい一日だった」と総括した。 「共和党は下院で予想を上回る結果を出す一方、上院の多数派の議席をさらに伸ばした」とし事実上の勝利と評した。
考えてみて欲しい。 トランプ氏が共和党大統領候補選挙で勝利した当時、共和党の重鎮たちの中には、トランプだけは絶対に支持しないと言う人物が圧倒的に多かった。 それが、大統領選挙勝利後、彼を共和党主流派に従わせる事が出来るとの打算から大部分の共和党員が受け入れた。 しかしトランプ氏は、この2年間で共和党を見事に自分のカラーに変えてしまった。
今回の選挙で下院議席の過半数は民主党に譲ったものの、トランプ氏の選挙戦略は、最初から「上院と州知事の重視」で、下院はあまり重視していなかった。
共和党はその上院と議会で掌握していた重要なポジションの大多数を死守することに成功した。
トランプ氏が3日に訪れたフロリダ州は、大統領選では常に接戦州となり、共和党内にくすぶる「反トランプ」の動きを封じるためにも是非とも勝利したい選挙区だったが、上院と州知事選ともに共和党が議席を確保、それも親トランプ性向の人物が当選した。 今回の選挙でトランプ氏は共和党内の掌握に成功した。
上院は、最高裁判事や政府官僚などの「人事を承認」する権限を持っている。 また、現在各国と交渉している「自由貿易協定を承認」する等の外交的な権限を有している。 トランプ外交を継続して進めるためにも、上院を絶対に押さえる必要があった。
また、州知事は、10年ごとに行われる選挙区の区割りを決める権限を持っている。 特定の政党や候補者にとって有利な区割りを設定することができる。 つまり今回の州知事選は、2020年の大統領選に直結する重要選挙であり、共和党は民主党を超える議席を確保し、トランプ氏再選の可能性を高めることができた事になる。
しかも、中間選挙後も共和党は行政府、立法府、司法府を掌握したままだ。
これらの要素を踏まえると、「トランプ外交」が大きく変化するとは考えにくい。 彼の性格から考えると、変わらず「我が道を行く」だろう。
これを朝米関係に当てはめてみても、大きな変数がない事がわかる。
アメリカの外交方針を事実上決定すると言われる上院外交委員会も共和党が掌握、次期委員長にトランプ氏の朝鮮政策基調に同調する人物が就任する。 つまり、今回の選挙結果の影響はさほど大きくなく、進展速度の緩急こそあれど、現行の「トランプ路線」に大きな変化は起こらない。 「新しい朝米関係構築」への流れは変わらない。
中間選挙を無難に乗り切り2020年の大統領選挙への道筋もついて、「足枷」が外れて身軽になったトランプ氏は反って動き易くなったのではないだろうか。 事が上手く運ばなければ、「非協力的な民主党のせい」と責任転嫁もできる。
巷では「トランプ大統領の敗北」で、民主党によって「暴走に歯止め」がかかり、「米朝関係の見直し」が行われるとの「希望的憶測」が語られているが、朝米関係改善への流れは止まらないだろう。(Ψ)
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