米国の著名なジャーナリストであるティム・ショロックは11月17日(現地時間)、米国の時事週刊誌「ザ・ネーション」オンライン版に長文の記事を載せ、北朝鮮が「巨大な欺瞞戦術(great deception)を使っている」とした11月12日付けニューヨーク・タイムズ紙を厳しく非難した。
この記事のタイトルは、「ニューヨーク・タイムズは北朝鮮問題に関してどのように大衆をだましたか」だ。
ティム・ショロックはこの記事で、戦略国際問題研究所(CSIS)のの報告書を用いて「北朝鮮のミサイル秘密開発疑惑」を指摘したニューヨーク・タイムズ紙の報道は、米国の軍産複合体の利害を代弁した歪曲報道で、「欺瞞戦術」で大衆を騙しているのは北朝鮮ではなくニューヨーク・タイムズ紙であると指弾した。
興味深いのはティム・ショロックが、この記事を執筆したデービッド・サンガーは「米国の情報機関から北朝鮮の兵器開発に関する数十件の情報を提供されてきた」とし、「今回の報道は、彼の“ディープ・ステート・ジャーナリズム(deep-state journalism)”方式に深刻な疑問を起こす」と指摘したことだ。 “ディープ・ステート”とは「国家の核心権力および情報機関の内密なところから出る議論の多い政治的メッセージ」を意味するという。
デービッド・サンガーが書いた12日付け報道は、「米国の軍産複合体と深く関連していて、朝鮮半島に対する米国マスコミの報道に重要な役割をしている」(ティム・ショロック)戦略国際問題研究所の報告を用いたもので、“ディープ・ステート方式”によるでっち上げに過ぎないというわけだ。
ティム・ショロックは、「デービッド・サンガーはあまりに長い間北朝鮮問題に対する米国情報機関の広報官の役割をしてきた」と指摘しているが、決して根拠のないことではない。
デービッド・サンガーとニューヨーク・タイムズには北朝鮮と関連したあからさまなでっち上げ報道の”前科”がある。
20年前の1998年8月、北朝鮮との間でジュネーブ合意を結び融和政策を進めたクリントン政権下で浮上した「金倉里(クムチャンリ)疑惑」をご記憶だろうか?
北朝鮮がジュネーブ合意に反して、平安北道・金倉里(クムチャンリ)で、秘密の大規模核施設建設を進めており、衛星写真の分析結果から原子炉及び再処理施設である疑いが強いという「疑惑」であった。
この「金倉里疑惑」を”スクープ”したのがニューヨーク・タイムズ紙で、記事を書いたのが、デービッド・サンガーであったことを知る人はほとんどいない。 後にでっち上げであることが明らかになる「金倉里疑惑」も、今回戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書を用いて「北朝鮮のミサイル秘密開発疑惑」をでっち上げたのも、デービッド・サンガーであったことをしっかりと記録に残しておくべきだろう。 デービッド・サンガーは「金倉里疑惑」だけではなく20年前から数多くのでっち上げ記事を書いており、ティム・ショロックが指摘しているように「北朝鮮問題に対する米国情報機関の広報官の役割をしてきた」曰く付きの記者であることを記憶に止めおくべきだ。
「金倉里疑惑」に話を戻すが、当時ニューヨーク・タイムズ紙はCIAもしくはDIA(米国防情報局)など米情報機関のリークに基づいた”スクープ記事”として鳴り物入りで大々的に報じた。 この報道を契機に、クリントン政権のジュネーブ合意に批判的な強硬論が沸騰、韓国の保守系紙は「既に米側が現地でプルトニウムの痕跡を採取済み」などのでっち上げ記事を増産した。 このような中で米議会でも徹底追及すべきとの声が高まり、クリントン政権は翌年の99年5月に、50万トンの食糧支援と引き換えに米国務省による現地視察団を派遣するに至る。
こうして金倉里を訪問した米国務省の調査団が目撃したのは「何の設備もない巨大な空洞」で、核施設の痕跡すら発見できなかった。
ニューヨーク・タイムズ紙の鳴り物入りの”スクープ記事”は、何と自国政府の調査団によって、真っ赤な嘘、偽りで、悪質なでっち上げ記事に過ぎなかったことが明らかにされたのである。
「火のないところに煙は立たぬ」というが、それは火のないところに煙を立たせた破廉恥なねつ造記事、ニューヨーク・タイムズによる恥ずべきでっち上げ報道であったことを忘れてはならない。
20年前の「金倉里疑惑」と今回の「ミサイル秘密開発疑惑」には共通点がある。
共通点の一つは政治的動機。 クリントン政権のジュネーブ合意、トランプ政権の朝米首脳会談など、時の政権が推進する融和政策に致命的打撃を与えようとする、ネオコン及び民主党強硬派、リベラルホークの意を汲んだ意図的なでっち上げであること。
今一つの共通点はでっち上げの手法が酷似していること。 まず情報源だが、「情報機関」などと極めてあいまいなことだ。 今回の「ミサイル秘密開発疑惑」に関しては「戦略国際問題研究所(CSIS)の報告書」だが、実態はネオコンの影響下にある強硬論者であるビクター・チャCSIS韓国部長が情報源だ。 「情報機関」であれ「CSISの報告書」であれ、軍産複合体の利害を代弁する強硬派の政治的メッセージを伝えているという点で共通している。
次に物証らしきものとして、常に衛星写真とその分析結果という枕詞がついてくるのも共通点だ。 「金倉里疑惑」の時の衛星写真はまったくのでっち上げで、今回の「ミサイル秘密開発疑惑」の衛星写真は、半ば公開されているサッカンモルの単距離ミサイル基地の写真。 しかしこの写真は基地の写真であり、「ミサイル秘密開発」を裏付ける写真ではない。 衛星写真とその分析結果という枕詞は、でっち上げ情報に信ぴょう性を付与するための小道具であるという点で共通している。
北朝鮮の核・ミサイル問題に関するニューヨーク・タイムズなど米大手紙のでっち上げ報道は上記3点においてほぼ共通しておりパターン化している。
日本では米国の大手マスコミの報道を無条件信じる傾向があるようだ。 米国に対する根拠なき幻想が原因であろう。
しかし、上述のようにニューヨーク・タイムズなど米大手紙は、北朝鮮に関連して、火のないところに煙を立たせる、悪質なねつ造報道を何のためらいもなく量産してきたし、これからもでっち上げ記事を書き続けるだろう。 騙されたくないのなら根拠なき幻想を捨て去るべきだ。(M.K)
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