5分でわかる朝中関係

朝中関係

近年悪化していた朝中関係も、ここにきて伝統的親善関係を修復しつつある。

〇第二次世界大戦時、日本帝国主義に抵抗して共に闘った抗日連軍の絆が培った、朝中指導者たちの「血の同盟」により、固い友好親善関係が築かれてきた。

朝鮮戦争時の1950年10月から中国人民志願軍が朝鮮を支援、朝鮮戦争終戦協定の調印を迎えた。

1961年7月、朝中友好協力相互援助条約を締結し以降、多少の紆余曲折はあれど、朝中友好親善の基本的スタンスは守られてきた。

〇転機が訪れたのは1992年8月の中国の韓国との国交樹立だ。 中国は経済発展強化を口実に朝鮮に国交樹立の了解を求めたが、これがそれまでの両国の関係に少なからぬ変化をもたらすことになる。

鄧小平氏による経済開放政策に沿って資本主義的市場経済システムを順次導入していった中国では、「南北等距離外交」を謳いつつも、実際には韓国との経済的結び付きを深めていく一方、指導部の世代交代が進むにしたがって、朝鮮との「伝統的友好親善」のその意義が次第に薄れていった。 また、中国指導部内ではそれに伴い、朝鮮に対する大国主義的なアプローチが強まってきた。

〇2011年12月、金正日総書記の逝去を機に、その傾向は一層顕著になる。

2013年12月8日、朝鮮労働党政治局拡大会議でいわゆる「親中派」と目される張成沢国防委員会副委員長(当時)が失脚し、12日の国家安全保衛部特別軍事法廷で処刑されると、中国は朝鮮に対するエネルギー支援を減らし、対貿易規模を縮小させるなどの意趣返しをして見せた。

極めつけは2015年9月3日、中国人民抗日戦争・世界反ファシズム戦争勝利70周年記念式典だ。

中国の習近平総書記は式典で韓国の朴槿恵大統領(当時)を優遇し自身の近くに座らせ、朝鮮代表である崔竜海朝鮮労働党副委員長を末席近くに追いやる冷遇を見せた。 10月10日の朝鮮労働党創建70周年記念式典に劉雲山中国共産党中央政治局常務委員が参席し、「伝統的朝中関係の修復」を合意したりはしたが、12月12日、朝鮮の牡丹峰楽団が北京公演を直前で取りやめて帰国するなど、朝中関係は冷え込んだ。

〇2016年6月30日、金正恩委員長は中国共産党創建95周年に際し祝電を送り「長い間歴史的な根を持つ朝中親善」を守るよう強調した。 しかし、二大経済大国となったという尊大感の表れか、はたまたアメリカの脅しに屈したのか、中国はアメリカが仕掛ける対朝鮮経済制裁に歩調を合わせ始める。

このような中、2017年5月4日朝鮮の労働新聞が異例の論評を発表、「人民日報」「環級時報」の論調に対し、「朝中親善がどれだけ大事でも核と交換までして乞う我々ではない」と中国を批判した。 9月22日にも労働新聞は「人民日報」「環級時報」を名指しで批判している。

〇中国がアメリカに同調してUN安保理制裁決議を支持、主導するに至って、朝鮮は中国と一定の距離を置く意思を見せる。 金正恩委員長は10月25日、中国共産党第19回大会に祝電を送ったが、伝統的親善には言及せず、「両国間の関係が両国人民の利益に合わせて発展すると確信する」という文言に留めたのはまさに良い例だ。

習近平総書記の特使として宋濤中国共産党対外連絡部長が11月17日平壌を訪れたが、金委員長には合えず、崔竜海朝鮮労働党副委員長と会談するにとどまった。

一方で中国は12月22日、アメリカと協議して対朝鮮UN安保理決議を主導、採択させた。

〇2018年に入り、朝鮮の疾風怒涛の外交攻勢が始まる。

1月、金正恩委員長の新年の辞を契機に、一気に南北関係を稼働させ、あれよあれよという間に4月27日の北南首脳会談にこぎつけた。 返す刀で、3月訪朝した韓国大統領特使を通してトランプ大統領との早期の会談を打診、説明を受けたトランプ大統領はこれに即応、5月から6月上旬に歴史的な朝米首脳会談が行われる見通しとなった。

一方、中国はアメリカとの経済貿易戦争に陥る危機に直面、一度はアメリカの圧力に屈し対朝鮮制裁に加担する愚を犯したが、アメリカと対峙するには朝鮮との伝統的親善の復活が不可欠となった。

中国は急ぎ朝鮮と接触、3月25日から28日にかけて金正恩委員長が習近平国家主席の招請により中国を非公式訪問する運びとなった。 中国は金委員長に対し国賓級接待でもてなした。 双方は「朝中両国の歴史と伝統を継承し、社会主義偉業を推進する共同の戦いにおいて結ばれた親善的な朝中関係より高い段階に発展させる重要な契機」と確認した。

以降、4月3日に朝鮮の李容浩外相が北京で王毅外交部長と会談して朝中親善関係発展と双方関心事について意見交換、4月14日には宋濤中国共産党対外連絡部長を団長とする中国芸術団訪朝し、金正恩委員長が公演を観覧、宋部長と会談するなど、朝中関係は「伝統的親善」を急速に復旧しつつある。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。