5分でわかる朝米関係

大前提として、朝鮮とアメリカは未だ戦争状態にあるという事実を忘れてはいけない。

○太平洋戦争での日本の降伏により朝鮮半島がその植民地支配から解放された直後から、アメリカは朝鮮半島に親米反共国家を作り自国の世界軍事戦略の最前線基地化することを目論んできた。

1945年9月、朝鮮半島の北緯38度線以南地域に軍政を敷いたアメリカは、親米政治家の李承晩をけしかけて半島南半部に大韓民国(以後韓国)政府の単独樹立を強行、これに対抗する形で北半部に樹立した朝鮮民主主義人民共和国(以後朝鮮)に対し、1950年6月25日攻撃を開始、朝鮮戦争を引き起こした。

アメリカは自国軍を実質戦闘部隊とする「国連軍」を編成、韓国軍支援と称して朝鮮戦争に介入し、朝鮮人民軍とその支援として派兵された中国義勇軍と戦闘、戦線膠着のまま1953年7月27日、休戦協定を結んだ。以来、朝鮮戦争は終戦を迎えぬまま今日に至り、現在も尖鋭な朝米対決が続いている。

○アメリカは朝鮮戦争以降、駐韓米軍に戦略核兵器を配備(1958年から。最大時には1,000発以上あったとされる)し朝鮮に核の脅威を与え続けた。また、朝鮮侵攻を想定した大規模な軍事演習を毎年のように行い、朝鮮を刺激し続けてきた。

1968年に米海軍諜報船プエブロ号拿捕事件、1969年に米海軍EC-121偵察機撃墜事件、1976年にポプラの木事件が発生、朝米武力衝突となったが、いずれも米軍を朝鮮人民軍が撃破、アメリカが謝罪する形になった。

○絶えず続くアメリカの軍事的脅威に対峙するために国力の大半を軍事に費やさざるを得ない状況のなか、朝鮮は電力不足解消のためにロシア(当時はソビエト連邦)から原子力技術を導入、原子力発電開発に踏み切った。 朝鮮は1985年核拡散防止条約(NPT)に非核所有国として加盟したが、アメリカは1993年「朝鮮の核開発疑惑」を持ち出し不当な圧力を加え始め、朝鮮はこれに反発、NPT脱退を宣言した。

アメリカは戦争辞さずの軍事的圧力を加えたが、それに対し朝鮮も準戦時体制で応酬、一触即発で一時は開戦も危ぶまれたが、朝米間の熾烈な交渉の末、1994年10月「朝米基本合意」(ジュネーブ合意)がなされた。

○朝鮮は「朝米基本合意」をはじめとする朝米間の合意を誠実に履行しようとした。しかし、アメリカは初めから合意の履行に対して極めて不誠実であり、都度破り続けてきた。 ここにはいわゆる「朝鮮崩壊論」に基づく「希望的観測」、そうなって欲しいと願うアメリカ側の願望が色濃く反映されて来た。 事実、「枠組み合意」を行ったクリントン政権では、当初、金日成主席の逝去(1994年7月)によって朝鮮が程なく政権崩壊するものと踏んでいたし、オバマ大統領も2105年1月、近いうちに崩壊すると信じていると示唆している。

2001年クリントン政権からブッシュ政権に替わると、アメリカは朝鮮を「悪の枢軸」と非難、対朝鮮政策の見直しを打ち出し両国緊張関係は一段と高まった。

威嚇を続けるアメリカに対し、朝鮮は2003年1月NPTから脱退、電力供給のための原子力研究を、自国防衛のための戦略核開発に切り替えることとなる。

ブッシュ政権下、続くオバマ政権下では「戦略的忍耐」の名の下、多少の接触こそあれど、対朝鮮交渉を事実上放棄、経済制裁圧力を執拗に加えてきた。

対する朝鮮は圧力をものともせず、アメリカと対等の立場で話し合いを進めるべく、自らの戦略核兵器の完成を目指し、核の運搬手段の開発に注力した。

○2017年1月、世界各国周囲の予想を覆し、トランプ政権がアメリカで発足、アメリカは「最大限の圧力」方針を打ち出し4月~6月にかけて原子力空母、原子力潜水艦を朝鮮近海に展開、朝鮮を威嚇した。

これに対し朝鮮も一歩も引かず、様々なミサイル発射実験を続けて実施、対抗して見せた。

その一方で、5月にオスローで非公式接触を行うなど、朝米間ではオバマ政権下でとは違う水面下でのアプローチが各チャンネルを通して行われるようになった。

11月、トランプのアジア歴訪に合わせる形で朝鮮半島近海に空母を3隻展開して軍事演習を行ったアメリカは、朝鮮を「テロ支援国家」に再指定し追加制裁をかすとした。

朝鮮は11月29日「火星15」の発射に成功、戦略核兵器の完成を宣言した。これにより朝鮮は、アメリカの各脅威に対抗しうる手段を持って対等に交渉できる足場を固め、またそれまで、軍事費に大きく割いてきた国家予算を内需拡大に回すことができるようになった。

〇ここで朝鮮は大きく転換、2018年1月、金正恩委員長の新年の辞を皮切りに、怒涛の外交攻勢に打って出た。

3月、訪朝した韓国大統領特使に、金委員長がトランプ大統領との早期の会談を打診、「朝鮮半島の非核化」を議論する用意がある旨を伝達した。

訪米した韓国大統領特使から説明を受けたトランプ大統領はこれに即答、5月から6月上旬に歴史的な朝米首脳会談が行われる見通しとなった。

次期米国務長官に指名され、昨年から水面下での朝米接触を指揮してきたとされるポンペオCIA長官が、3月末から4月1日にかけて極秘裏に訪朝、金正恩委員長と会談したことが明らかになるなど、朝米首脳会談に向けての動きが可視化されるなか、来るトップ会談で朝鮮戦争終戦、国交樹立、朝鮮半島の非核化及び駐韓米軍の撤退が一気に劇的な合意をみる可能性は決して少なくない。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。