国際原子力機関(IAEA)の天野之弥事務局長が2日(現地時間)、ニューヨークで行われたUN安全保障理事会の核不拡散に関する会合で「要請があれば数週間以内に北朝鮮に査察団を送ることが可能だ」と述べたという。
なんでも、「『北朝鮮の核放棄を盛り込んだ米朝合意』がまとまれば、非核化の検証と監視に当たる査察団を数週間以内に派遣する準備ができている」ということらしい。
IAEAは一体何を勘違いしているのだろう。 IAEAにはいわゆる「北朝鮮の非核化」に取り組む権限がないのに、だ。
IAEAは本来、原子力の軍事転用を防止するために各国の平和的な原子力計画を管理する機関であり、ある一定の勢力の思惑に沿って他国の軍事施設を無作為に核査察するような行為を行ってはならない。 また、核軍縮分野の権限を有していない。
そもそも、朝鮮は2003年1月に核不拡散条約(NPT)を既に脱退しており、IAEAの査察を受け入れる義務も名分もないのだが。
IAEA事務局長がいくら「安保理の決議に従い、完全かつ検証可能、不可逆的な方法で北朝鮮を非核化することに寄与する」と言っても、朝鮮が受け入れなければそれまでだ。
実際、IAEAは2009年に朝鮮から査察団を追放されて以来現地に入ることはできていない。 人工衛星の画像などを用いて「北朝鮮の核活動を監視」しているのみだ。
にもかかわらず、天野事務局長は3月4日ウィーンで開幕したIAEA定例理事会で、「寧辺における2月末時点の核関連活動についての報告」をし、朝鮮で軽水炉の建設作業やウラン濃縮施設の利用が継続されていることを示す兆候があると主張して見せた。 直接確認もせずに、だ。
はたして、IAEAは公明正大な機関なのか? アメリカが決めさえすれば、何でも出来るものと勘違いしてはいないか? 思い上がりも甚だしい。
もとより、朝米交渉は「北の非核化」ではなく「朝鮮半島の非核化」について話し合われているのであり、朝鮮の一方的な核放棄などあり得ないが。
以前にも取り上げたことがあるが、天野事務局長の一連の言動は日本政府の意を汲んだものであり公正さを著しく欠く。
天野事務局長は、2018年7月5日に河野外相と会談しその場で「北朝鮮の非核化の検証においてIAEAが中心的役割を果たし、その知見、経験が最大限に活用されるべき」「IAEAが北朝鮮における監視・検証活動を再開する場合、日本としても応分の支援を行う用意がある」との方針を伝達されており、今回の発言もそれを踏まえた上での行動だろう。
天野事務総長が「IAEA」の看板を掲げて関与しようとしても、「朝鮮半島の非核化」は当事国である朝鮮とアメリカでしか解決ができない。 これは核保有国同士の軍縮問題であり、朝鮮半島から核兵器を無くそうというものだ。 核軍縮にIAEAの権限は及ばない。 事務局長は己が立場を弁えるべきだろう。(Ψ)
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