M.K通信 (31)風が吹けば波が立つ

北朝鮮が4日に続き9日に東海岸と西海岸で火力打撃訓練を行った。 この訓練と関連して、韓米日当局の動きはあわただしく、マスコミは騒々しい。

常識的にみれば軍事訓練はどこの国でも行っており、北朝鮮の小規模の火力打撃訓練に大騒ぎする光景は実に不可思議だ。

韓米軍事当局は去る3月からトランプ大統領が中止を宣言した合同軍事演習を再開させた。 3月には「キーリゾブル」を「同盟」と名を変え合同軍事演習を行い、4月には「マックスサンダー」に代わる連合空中演習を2週間にかけて行った。 トランプ大統領が「挑発的」と認めた韓米合同軍事演習を「規模縮小」を名分に再開したのだ。 さらに5月1日と9日には米国でICBM・ミニットマンの発射演習が行われた。

韓米合同軍事演習を再開させるなどの露骨な軍事的圧力に比べれば、北朝鮮が行った火力打撃訓練は小規模で取るに足らない。 にもかかわらず韓米日当局と代弁するマスコミが大騒ぎしている理由は何なのか?

金正恩委員長は去る4月12日に行った施政演説で、「今、アメリカではわれわれの大陸間弾道ロケット迎撃を想定した試験が行われ、アメリカ大統領が直接中止を公約した軍事演習が再開されるなど、6・12朝米共同声明の精神に逆行する敵対的な動きが露骨になって」いると指摘、「風が吹けば波が立つように、アメリカの対朝鮮敵視政策が露骨になるほど、それにこたえるわれわれの行動も伴う」と強調した。 また4月25日には北朝鮮の祖国平和統一委員会スポークスマンが談話を発表して、「風が吹けば波が立つのは避けられない。 南朝鮮当局が米国とともにわれわれに反対する軍事的挑発策動を露骨に行っている以上、相応するわが軍隊の対応も不可避になろう。われわれがどのような措置を取っても南朝鮮当局に言葉はないはずだが、もしそれに対して言いがかりをつけるなら問題はより複雑になり事態は険悪化することになろう」と指摘した。

北朝鮮の度重なる警告にもかかわらず、風を吹かせても波が立たないと考えたのなら実にあさはかだ。 北朝鮮非難を繰り返している保守勢力とマスコミにとって火力打撃訓練は驚きであったようだ。 ハノイ会談で米国が持ち出した「ビックディール」という名の降伏要求に北朝鮮が膝を屈するとでも思ったのだろうか? もしそうだとしたらあさはかを超えて愚かだ。

韓米日の保守勢力とマスコミは、いつものように「挑発」「安保理決議違反」と繰り返し非難している。 まるで壊れたテープレコーダーのようなワンパターンのプロパガンダだ。 一例をあげれば、5月11日付けの朝日新聞は社説で、北朝鮮の火力打撃訓練を「使い古された軍事的挑発」「身勝手」などと非難した。 しかし社説はなぜか再開された韓米合同軍事演習と米国のICBM実験については一言半句も触れていない。 再開された演習とICBM実験が北朝鮮に与える影響については目をつぶり、北朝鮮の軍事訓練だけを一方的非難しており、意図的なプロパガンダのそしりを免れない。 トランプ大統領が中止を約束した韓米合同軍事演習の再開は「使い古された軍事的挑発」ではないのか? ちなみに「ニューズウィーク」日本版は5月10日付けで「今週、米朝がほとんど同時にミサイル発射実験を実施―その真意はどこにあるのか」との記事を掲載、ICBM実験は北朝鮮に対する圧力であることをほのめかしている、ことを指摘しておく。

韓米日のマスコミによる壊れたテープレコーダーのような一方的な北朝鮮非難は、北朝鮮を「悪魔化」することを目的にした悪質な政治的プロパガンダで、世論を欺く悪質なキャンペーンに過ぎない。

北朝鮮の朝米交渉に対する姿勢は明確だ。 「先武装解除、後体制転覆」の試みである「ビックディール」を取り下げ、今年の末までに、受け入れ可能な案を持って出てくれば交渉を進展させることができるというものだ。

北朝鮮の崔善姫第1外務技官は4月30日の会見で「われわれの非核化意志に変わりはなく時がくれば非核化するが、それはどこまでも米国が現在の計算法を変えて立場を再定立する条件下でだけ可能だ。 ・・・米国が今のように問題を複雑にして違う道でさ迷いながらわれわれが示した時限内に立場を再定立して出てこない場合、本当に望まない結果をみることになろう。 われわれはわれわれが行く道を知っているが米国に時限を定めた以上留保しているだけだ。」と述べている。

制裁と圧力で北朝鮮を屈服させることはできない。 もし米国が「ビックディール」という北朝鮮が受け入れることができない立場を貫くなら、北朝鮮は崔善姫第1外務技官が指摘したように「われわれが行く道」を行くことになろう。

北朝鮮を非核化させたければ、北朝鮮が核抑止力を開発するに至った原因を同時に取り除かなけれれば不可能だ。

風が吹けば波が立つ。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。