習近平中国主席の訪朝(6.20~6.21)と平壌での首脳会談で、金正恩国務委員長と習近平主席は内外に朝中蜜月を誇示して見せた。
朝鮮中央通信の報道によれば、両首脳は20日に行われた首脳会談で、①伝統的な朝中親善協調関係を発展させることは両国の党と政府の一貫した立場であり、両国の根本利益に合致すると強調した②国際及び地域情勢が深刻かつ複雑に変化している環境の中で朝中両党、両国間の関係をより深く発展させることは両国共同の利益に合致し、地域の平和と安定、発展に有利であると評価した③朝中両党、両国間の戦略的意思疎通を緊密にし、相互理解と信頼を厚くし、高位級往来の伝統を維持、各分野の交流と協調を深化させていくために共同で努力することに合意した。
習近平主席は訪朝に先立ち「中朝親善を継承して時代の新たな章を書き記そう」と題した文を朝鮮労働党機関紙「労働新聞」に寄せた。 異例のことで朝中親善関係強化に向けた並々ならぬ意欲を伺わせた。
この文で習近平主席は、「国際情勢がどのように変化しても中朝親善協調関係を強固に発展させることについての中国党と政府の確固不動の立場に変化はない」、「70年の輝かしい道のりを歩いてきた中朝関係は新しい歴史的出発点に立っており、新しい生気と活力を醸し出している」と指摘した。
新たな歴史的出発点に立った朝中親善協調関係の発展は両国の根本利益に合致するとした両国首脳の認識は、習近平主席の訪朝はG20に向けた「対米カード」作り、などとする分析がいかに短絡的な見方であるかを示している。 朝中蜜月を良しとしない西側の視点を反映したものに過ぎず、朝中関係と朝鮮半島情勢を見誤ることにつながる。
中国国家主席の訪朝は2005年以来のことで14年ぶりに実現した。
その間朝中両国は大きな変化を遂げた。 北朝鮮は2017年にICBM及び水爆実験を成功させ、「国家核戦力の完成」を宣言、経済総集中路線を打ち出すに至っている。 また南北首脳会談、朝米首脳会談を行い、朝米関係の改善、朝鮮半島の平和と非核化のための対話の道を切り開いたのは周知の事実。 一方中国では目覚ましい経済成長を遂げ、世界第2位の経済大国になり、米国を脅かすに至っている。
朝中首脳会談はこのような両国の変化を背景に行われたと言えるが、習近平主席訪朝のタイミングは、両国ともに対米関係において国家と体制の根本利益にかかわる難題が浮上した局面で決断された。 北朝鮮は米国がハノイ会談で持ち出した一方的な非核要求は体制転覆のための試みと批判、計算法を変えて出直すことを求めている。 一方、中米貿易戦争は、米国が共産党の指導による中国の発展モデルを侵害する要求を持ち出すことによって容易ならざる局面に置かれている。 習近平主席訪朝による朝中蜜月の誇示は、国家と体制の根本利益、核心利益を守護するために選択された両国による戦略的決断と見るのが妥当であろう。
新華社通信によれば、朝中首脳会談で習近平主席は「朝鮮半島問題の政治的解決を支持する。 朝鮮半島の非核化の実現に中国が積極的な役割を果たす」と述べ、「北朝鮮の安保の懸念の解決に中国が力を添える」と強調した。 この発言は北朝鮮の一方的非核化ではなく、米国の核の脅威も除去する朝鮮半島の非核化を求める北朝鮮の提案に対する中国の支持を再確認し、朝鮮半島の平和体制の確立と北朝鮮の安全保障のためにしかるべき役割を果たすとの、より積極的な習近平主席の意志の表明である。
習近平主席のこのような言明は、北朝鮮が米国の核の脅威に対抗して開発した核兵器が中国の脅威であるかのような西側の情報がいかに荒唐無稽なでっち上げであるかを示すものだ。 中国にとって真の脅威は、「中国は発展すれば民主化すると信じていたが間違いだった」としながら、貿易戦争を仕掛け中国共産党の指導による発展モデルを否定する米国が現在の朝中国境にまで北上してくることであろうことは疑いない。
北朝鮮の体制転覆に繋がりかねない一方的な非核化、武装解除は中国の国益に照らしてみても受け入れられない要求ということだ。 これはロシアにとっても同様で、友好国である北朝鮮の核兵器ではなく、朝ロ国境に押し寄せる米軍こそが阻止すべき脅威であることは明らかだ。
4月の朝ロ首脳会談と習近平主席訪朝と朝中首脳会談を通じて、中ロがともに朝鮮半島の非核化と北朝鮮の安全保障について足並みをそろえ、北朝鮮の一方的な非核化を否定した。 それは中ロ両国が単純に北朝鮮との伝統的な友好国であるからだけではなく、自らの国益に合致するためである。
訪朝した習近平主席が自ら指摘したように、新たな歴史的出発を遂げた朝中蜜月は、朝鮮半島の非核化をめぐる朝米交渉に大きな影響を及ぼすことになろう。(M.K)
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