M.K通信 (46)ハーン・シャイフーン解放

シリア北西部イドリブ県南部のハーン・シャイフーンをシリア政府軍が奪還した。 シリア政府は8月21日、ハーン・シャイフーン解放を正式に宣言した。

欧米が支援するシリア「反政府武装勢力」が最後の拠点としてイドリブ県に立て籠もり反転の機会をうかがっていたことは周知の事実。 イドリブ県南部のハーン・シャイフーンは、首都ダマスカスとホムス、アレッポを結びシリアを北から南へと縦断する主要な幹線道路であるM5高速道路に沿っている要衝。 このためハーン・シャイフーンを失うことは、イドリブ県への供給ルートが遮断されることを意味し、立て籠もる「反政府武装勢力」にとっては致命的な敗北になる。

オバマ米政権によって仕組まれ、フランス、イギリス、トルコなどのNATO諸国が「反政府武装勢力」を支援したシリア内戦で、アサド政権とその軍隊が勝利していることは本欄で伝えて( M.K通信 〔19〕「欧米は無敵ではない」参照)きたが、シリア政府軍とロシア軍のハーン・シャイフーン解放は、イドリブ県から「反政府武装勢力」を放逐しシリアでの戦争を終わらせる上で決定的な前進になる。

というのも、シリア軍とロシア軍によるハーン・シャイフーン奪還作戦の過程で、国境を接するトルコによる「反政府武装勢力」に対する支援が断ち切られ、トルコもこれ以上「反政府武装勢力」を支える意思を放棄したように見えるからだ。 トルコなどからの支援がなくなれば「反政府武装勢力」は生命線を失ったも同然で敗北は時間の問題だ。

シリア各地で敗走した「反政府武装勢力」がイドリブ県に撤収した後、武力衝突を避けるためにアスタナ会合(2017年10月12日)、ソチ合意(2018年9月17日)などで、トルコが監視地点を設置して「反政府武装勢力」を統制する、イドリブに15-20kmの非武装地帯を設置し、M4,M5高速道路を商業活動に開放するーことなどが決定された。 しかしこのような決定は守られず、「反政府武装勢力」はM5高速道路を支配し続けたばかりか、支配地域を広げる軍事テロ作戦を強行する一方、ハーン・シャイフーンからの砲弾攻撃を絶え間なく行った。 明らかな停戦合意違反で、ロシアとシリアは「反政府武装勢力」を支援し続けるトルコとフランスなどNATO諸国に警告を発したが事態は改善されなかった。

シリア軍とロシア軍がハーン・シャイフーン奪還のために、合同作戦を実施したのは当然の成り行きであった。

トルコはハーン・シャイフーン陥落直前、「反政府武装勢力」支援のため軍を派遣するが、トルコ軍の車列はシリア政府軍の爆撃を受け立ち往生、ハーン・シャイフーン奪還を阻止することができなかったばかりか、トルコが設置した監視所もシリア軍に包囲され身動きがとれない状況におちいった。

ハーン・シャイフーンでトルコの支援を受けることができずに敗北した「反政府派」の約千人の敗残兵がアル・バブ国境検問所を通ってトルコに入国しようとした。 しかし、味方と信じていたトルコ軍による放水、催涙ガス、銃撃で押し返されてしまった。 敗残兵は「裏切り者、裏切り者、裏切り者、トルコ軍は裏切り者だ」と叫び、エルドアン大統領の肖像画に火をつけたという。

この時エルドアン大統領はモスクワにいた。 プーチン大統領の案内で、これから購入する最新鋭戦闘機スホイを見て回り、プーチン大統領とともにアイスクリームを頬張っていた。 「反政府武装勢力」に対するトルコの支援が打ち切られたことを示す象徴的出来事であったように見える。

イドリブ県に立て籠もっている「反政府武装勢力」の実体は、ヌスラ戦線として知られたハイヤット・タハリール・アルシャーム(HTS)だ。 ヌスラ戦線といえば、米国をはじめとする欧米諸国が「テロ組織」としたアルカイダネットワークの一部。 HTSとカメレオンのように名前を変えたからと言って、欧米が敵視する「テロ組織」であることは変わらない。 にもかかわらず、米国とNATO同盟国イギリス、フランス、トルコなどは「根絶すべきテロ組織」であるHTSを秘密裏に支援してきた。 この事実はハーン・シャイフーン奪還作戦の過程でより赤裸々に暴露された。 欧米がテロリストを支援してきたことはもはや秘密ではない。

シリア内戦は、欧米諸国が叫んできた「テロとの戦い」が虚構に満ちた偽善に過ぎなかったことを浮き彫りにしている。 「テロとの戦い」を叫びながら、テロ組織に資金、武器、傭兵を送り込み「反政府」を叫ばせ、アサド政権打倒を計ったのだ。 ハーン・シャイフーンに残された「反政府武装勢力」戦士の遺体の大半は外国人傭兵だったという。 奪還されたハーン・シャイフーンは、すでに解放されたシリアの他の都市と同様、シリア内戦は実は内戦ではなく、内戦を偽装した、アサド政権打倒を目的にした邪悪な侵略戦争であったことを物語っている。

ハーン・シャイフーンでの戦いが激化する中で、欧米のマスコミはシリア、ロシア軍がまるで一般市民を巻き込んだ無差別爆撃を加えているかの如く描写し、「人権」を叫びながらシリアとロシアを騒々しく非難する大々的なキャンペーンを展開した。 しかし、ハーン・シャイフーンが陥落すると、なぜか静寂を保ち沈黙している。 ハーン・シャイフーンでの敗北は、欧米の敗北を意味し、欧米のマスコミが伝えてはならない真実だ。 さらに米国とイギリスとフランスとトルコによって支援されていた「反政府武装勢力」なるものの実体は、テロ組織でその大半は傭兵であったとの事実は、欧米にとって知られてはならないタブーだ。 騒々しい反シリア、反ロシアキャンペーンは欧米の犯罪的なシリア侵略を覆い隠すためのプロパガンダに過ぎない。 日本のマスコミ報道も欧米に倣ってプロパガンダに終始したことは言うまでもない。

欧米マスコミによるプロパガンダは世界各地で毎日のように行われている。 米国をはじめとする欧米の侵略に抗う者は「悪魔の独裁者」で、欧米の利益に反する行為は「悪魔の行為」と描写される。 悪質で邪悪なプロパガンダは朝鮮半島でも繰り返されている。 北朝鮮を「悪魔」に描く米日韓によるプロパガンダは息を吸うように繰り返されており、そこにはいかなる真実も存在しないことに留意すべきだ。

ハーン・シャイフーンでのシリアとロシアの勝利は、「欧米は無敵ではない」、ことを今一度世界に知らしめた。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。