ポンペオ米国務長官が9日、平壌を再度訪問した。 前回の訪問から40日足らずの間隔で異例の早さだ。 背景には朝米首脳会談を是非とも成功させたいトランプ大統領の焦燥感が透けて見える。
ポンペオ氏は会談の日時、開催場所、主要議題の最終調整のために今回訪朝したが、帰りに朝鮮に抑留されていた朝鮮系アメリカ人スパイ3名を連れ帰った。
昨年9月にアメリカ政府が朝鮮旅行を禁止するまで、たくさんの朝鮮系アメリカ人が朝鮮を訪れていた。 ポンペオ氏は当時CIA長官の職に在った。 それらの訪問客にエージェントを紛れ込ませて諜報活動を行ってきたとしても決しておかしくはなく、むしろ積極利用して活動を把握していたはずだ。
アメリカが自国民の訪朝を禁止したのは表向き上、旅行代金が朝鮮の核開発に流用されているとの理由だが、実のところは、自国スパイがどんどん摘発拘束されてしまうのでこれ以上の活動が無理と判断したからだ。
ポンペオ氏が前回訪朝した際、平和協定の締結、朝米国交正常化など、双方が敵対関係を清算して友好親善関係に発展させる一括妥結を合意したと言う。 それに伴い朝鮮は朝米間の相互避難中止や朝鮮半島非核化の段階的措置を取ることにし、ポンペオ氏は対朝鮮関係改善措置を約束した。
朝鮮はこの間、対米非難を控え核実験場の廃棄とICBM発射の中止措置を取った。 これに対しアメリカは、合同軍事演習の縮小中止と駐韓米軍の撤収に当たらせるため、ハリソン前太平洋艦隊司令官を駐韓米国大使に任命した。 ここまでは良かった。
次のステップとして、朝鮮はアメリカのスパイ3名を釈放し、アメリカはそれに合わせて関係正常化の為の実質的措置を取るはずだったのだが、アメリカ国内の強硬派が攻勢に出てきて、米朝首脳会談は圧力と制裁の結果だとして対朝鮮非難世論の度合いをさらに上げ、朝鮮に対し各種追加制裁を発表した。
またしても約束を守らないアメリカに対して業を煮やした朝鮮は、それまで控えてきた対米非難強度をあげて、朝米首脳会談を取りやめる意志をアメリカ側に通報した。 これに慌てたトランプ大統領が、ポンペオ氏を急遽派遣したわけだ。
そもそも朝米首脳会談は、アメリカ強硬派の圧力と制裁に朝鮮が屈した結果ではない。 朝鮮の国家核武力完成によって戦争が仕掛けることが出来なくなり、逆に追い詰められたアメリカに朝鮮が救いの手を差し伸べたものだ。
トランプ大統領は朝米首脳会談の日時、開催場所の発表を引き延ばしている。 それは平壌と発表した途端、反対勢力の猛攻にさらされて潰される可能性があり、これを回避する必要があるからだ。
ポンペオ氏は、最近のアメリカ国内での対朝鮮非難世論と制裁強化の動きはトランプ大統領の意図ではないと説明、先の訪朝時に合意した平和協定締結と国交正常化の一括妥結を必ず守るとし、朝米首脳会談の開催を再度要請した。
朝鮮は、首脳会談を是非とも成功させたいと願うトランプ大統領の難しい政治的立ち位置を考慮し、トランプ大統領の立場を強化する為にかなり忍耐強く自制してきたが、強硬派らを制御仕切れないトランプ大統領に少なからず失望したはず。 それを敏感に感じ取ったトランプ大統領がポンペオ氏を急遽派遣、朝鮮側に自分たちを信じて欲しいと伝えにきたのが実情とみられる。
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