「民族和解、協力」の雰囲気が遠い昔の事であるかのように霞んでしまっている。
反動保守政権が退陣した後、少なくとも離散家族の再会、金剛山観光再開・開城工業団地再稼働など民族内部問題に関しては進展を見るだろうと期待されたが、裏腹に南北関係は2018年以前の状況に戻ろうとしている。
直近でも、金正恩国務委員長が金剛山観光地区を現地指導した席で「見ただけでも気分が悪くなるごたごたした南側の施設を南側の関係部門と合意して残さず撤収するようにし、金剛山の自然景観にふさわしい近代的なサービス施設を朝鮮式に新しく建設すべきだ」と指示を出すなど、南側当局に対する姿勢は厳しい。
「民族自主」の原則の下で和解が進むものと期待された南北関係が何故いまこのような事態に陥ったのか。 言うまでもなく、韓国のあいも変わらぬ主体性なき対米追従に尽きる。
実際、金剛山観光事業が頓挫する事態が起きているのにも関わらず、韓国政府はこの問題が朝米交渉の難航から派生した一過性のもののように安直に受け止めて、時間が経てば解決できるという甘い認識をのぞかせている。 だが事は深刻だ。
先の金正恩国務委員長の発言は、金剛山観光施設を世界的名山らしく「ウリ(朝鮮)式の建設様式」を最大限に発揮し、世界的な観光施設、人民のレクリエーション施設に変貌させるという意思の表れであり、過去の南側依存、任せきりの観光事業からの脱却を示したものであり、そこには「約束」を守らない韓国政府 に対する憤りが滲む。
9.19平壌共同宣言2条2項では「南と北は条件が整うに応じて、開城工業団地と金剛山観光事業を優先的に正常化する」ことに合意している。
金国務委員長は、現状では米国の対朝鮮制裁が機能している点を考慮し、文在寅政権に対する助け舟として新年の辞で直接「条件のない再開」を言及したが、履行の意志がまるで見えない文在寅政権に対し強い遺憾が発せられたということだ。
言い換えれば、「金剛山南側施設の解体」指示の原因提供者は他でもない、文在寅政権だという事。 文在寅政権の態度が変わらぬ限り、開城工団もまた、金剛山観光事業と同じ運命を辿らざるを得ない。 にもかかわらず韓国政府は事態の深刻さを理解していないのか、南北関係が完全に閉じたわけではなく南北協力が生きているという期待感を示している。
金剛山観光再開問題は、韓国政府に履行する意志があれば米国の対北朝鮮制裁とは何の関係もなく再開することができる事業だった。
康京和外交部長官が24日の記者懇談会で「個人の北観光は制裁対象じゃない。 統一部が許すかどうかの問題」だと発言している。 本来であれば、金錬鉄統一部長官が「個人の北観光は制裁対象じゃない。 外交部が許すかどうかの問題」「米国を説得するために、外交部と最善の努力を尽くす」と発言すべきなのに南北関係担当セクションもまともに機能していない。
かえって米国に「韓国は、自分たちの許可なしには何もしないような国(トランプ大統領の正確な言い回しは『彼ら(韓国)は、私たちの承認なしにそのようにしないだろう』)」と言わせるのだから、崇米自大思想が骨の髄まで浸み込んでいるとしか言いようがない。
朝鮮の金星UN駐在大使は、第74回UN総会の一般討論演説(9.30)で「わずか一年前、北と南、全民族と国際社会を大きく激動させた歴史的な北南宣言は今日、履行段階に入ることも出来ず膠着状態に陥った」「世の人々には平和の握手を演出しておいて、帰って座っては我々を狙う最新の攻撃型兵器搬入と米国との合同演習を強行している南朝鮮の二重的行動に起因する」と指摘、「我々を狙った最新の攻撃型兵器搬入と米国と南朝鮮の合同軍事演習は、相手方に対する敵対行為を全面停止し武力増強をしないことに合意した板門店宣言の履行のための軍事分野の合意書の乱暴な違反であり、挑戦」と批判した。
大使はまた、「北南関係の改善は、南朝鮮当局の事大主義的本性と民族共同の利益を侵害する外勢依存政策に終止符を打ち、南北宣言の誠実な履行によって民族の前に自己の責任を果たす時にのみ成すことができる」と指摘している。
南北和解協力に再び動力を吹き込むためには、韓国政府が民族共助の立場を明確に示さねばならない。 「民族自主と自決の原則」に立ち、金剛山観光再開問題や開城工業団地再開問題などの民族内部問題に対し当事者の役割に無条件忠実であることだ。 南北首脳会談合意を誠実に履行する可視的行動を取り朝鮮の信頼を取り戻すことが必要だ。
韓国政府は今一度「民族自主」に立ち返り身を正すべきだろう。(Ψ)
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