ヤンキーは所詮ヤンキー?

コリョ・ジャーナル

来る11月の米国大統領選挙に向けて、与党共和党と野党民主党、共に選挙戦モードに突入しつつある。

現職大統領のトランプ氏が事実上の単独候補となっている共和党に対し、民主党では複数の候補者らが指名獲得の為しのぎを削っているが、現時点ではバーニー・サンダース上院議員がニューハンプシャー州とアイオワ州の大統領予備選挙で勝ちリードを保っている。

サンダース氏は米国内政治に重点を置き社会福祉の充実と富裕層への課税強化等を掲げており、とりわけ若年層からの支持が厚い。 だが、これはあくまで米国内政治に関してだ。

外交に関しては未知数で、「朝鮮の非核化の為、金正恩国務委員長と無条件で会う用意がある」と発言する等、氏の対朝鮮外交に期待感を寄せる向きも少なくない。 だが、果たしてそうだろうか。

サンダース氏は自身を戦争反対者として見せることに成功している。 先月イランのソレイマニ将軍を暗殺したトランプ大統領の行動に対し、氏は民主党の大統領候補志望者の中で最も声高く反対・批難し自身に対する支持率を上昇させた。

しかし、米国既得権層を意識して話す時、サンダース氏は、選挙戦スピーチやテレビのインタビューで国民に演説する際に氏が見せるイメージとは非常に異なるものになっている。

既得権層を代表する米メディアの一つである「ニューヨーク・タイムズ(NYT)」が今月発表した民主党の大統領候補の外交政策調査で見せたサンダース氏の回答は、米帝国主義に対する自称「民主主義社会主義者」の態度と非常に異なるイメージだ。

そこでは、サンダース氏の米帝国主義への忠誠心と軍用機の配備に対する氏の準備の軍事的・知性的確立と富裕層を安心させるための「努力」が垣間見える。

看過できないのは、「イランまたは北朝鮮の核実験またはミサイル実験を先制するための軍事力行使を検討するか」との問いに対し「YES」と答え、「サンダースのホワイトハウス」(サンダース政権)が、米国に対するミサイルまたは核攻撃の脅威ではなく、単なる武器テストを防ぐ目的でイラン・朝鮮に対する軍事攻撃を開始しうるとしたこと。 これはトランプ政権初期に進められたものと同じように扇動的で驚くほど無謀な立場だ。

この主張は、ジョージ・W・ブッシュ政権によって2002年に米国の公式政策として宣言された「先制戦争」の原則に完全に一致する。 これは「外交政策の手段としての攻撃的な戦争」という違法な主張であり、第二次世界大戦後の国際法および条約で定められた原則に違反する。 よって、サンダース氏の過去のイラク戦争への反対は純粋に「戦術」の問題で、帝国主義戦争に対する原則的な反対ではなかったとの疑問を投げかける。

また、サンダース氏は「人道的介入のために軍事力を検討するか」との問いに「YES」と答えている。

「人権」を振りかざして米国が行った戦争犯罪には、ボスニア戦争とセルビア爆撃、2011年のリビア空爆がある。 喫緊ではワシントンと結びついたアルカイダと、その指示を受ける代理民兵によって仕組まれたシリア内戦がそれだ。 米国の詐欺的な人道的口実は、イラク侵攻の口実として使用された「大量破壊兵器」の嘘にも劣らぬ酷いものだ。

これらの戦争犯罪の結果、社会全体が破壊され、数百万人が死亡し、さらに数千万人が脱出した。 サンダース氏は民主党政権時代に特に強調された「人道戦争」と言う教義に完全に同意している。 ソレイマニ氏暗殺に対するトランプ政権の行動を違法だと批難するが、暗殺に対して原則的な立場を取ることを拒否し、ソレイマニ氏を「テロリスト」とすることによってその攻撃を正当化している。

サンダース氏は「朝鮮半島から米軍を撤退させることに同意するか」との問いに、「直ぐにではない。 我々は韓国と緊密に協力して朝鮮半島の平和に向けて前進する。 これが最終的に北朝鮮の核問題に対処する唯一の方法だ」と答えている。 米国支配階級の世界的利益を主張するため、米軍の展開をより一般的に支援するのと同様に朝鮮半島での米軍の継続的駐留を支持した。 現政権と変わらない姿勢と言うことだ。

米国の何百万人もの労働者、学生、若者が現在サンダース氏を支持するのは、彼らが米国社会の社会的不平等、残虐性、軍国主義を軽蔑し、反対し、これら諸悪を資本主義制度と結びつけて認識しているからだ。 だが、残念ながら彼らは、彼らの希望が現実的でないことを知ることになるだろう。 サンダース氏の外交政策は民主党とオバマ政権の攻撃的で軍国主義的な政策に沿ったもので、徹底的に帝国主義的だからだ。

外交政策に関するトランプ政権と民主党の違いは戦術的なもの。 武力を通じて米国の世界的覇権を主張するという戦略的方向性は共有している。 結局サンダース氏もこの枠から抜けていない。

右も左も、ヤンキーは所詮ヤンキーと言ったところか。

米国の本性は容易には変わらない。 「過度な期待」は無用、冷静に見定めよう。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。