金正恩国務委員長が文在寅大統領に親書を送り同族である南の同胞に慰労の意を伝えたのは3月4日のことだ。
青瓦台国民疎通首席秘書官がマスコミに明らかにしたところによれば、金正恩委員長の親書には次のような内容が含まれていた。
・・・コロナ-19ウィルスと戦う南の同胞に慰労の意を伝える。 南の同胞たちがコロナ-19ウィルスに必ず打ち勝つことを信じる。 南の同胞たちの大切な健康が守られることを望む。 コロナ-19ウィルスを必ず克服できるよう静かに応援する・・・
金正恩委員長が2月1日に習近平中国国家主席に書簡を送り、新型コロナウィルスと闘う「兄弟的中国人民の痛みと試練を少しでも分かち合い助けたいと思う心からの心情」を伝えたことは周知の事実だ。 友好国に慰労の書簡を送った金正恩委員長が血を分けた南の同胞に慰労の意を伝えたのは自然なことだ。
これとは対照的に、韓国の情報機関と親米右翼勢力は、朝鮮でコロナ感染が広がっているかのような偽情報を流し続けている米国とともに朝鮮を貶めるプロパガンダに血眼になって来た。 幸いにも朝鮮では感染症の流入を食い止め新型コロナウィルス感染者が出ていない。 米国はこれを否定し朝鮮でコロナ感染が蔓延してるかのように偽情報を懸命にまき散らしており、韓国の親米勢力は虎の威を借りる狐のように追従している。 まるで同胞である朝鮮人民がコロナウィルスに感染するのを願うかのようにである。 決して大げさな表現ではない。 インターネット情報サイト「自主時報」は3月17日付けで、情報機関の管理下にあり極右団体の支援を受ける脱北者団体が、北の地域に「コロナウィルスを撒くための気球を飛ばしている」との「うわさ」を取り上げ警鐘を鳴らした。 「自主時報」が「うわさ」をわざわざ取り上げたのは、彼らが「敵」と考える朝鮮にコロナ感染者が出ていないことを容認できず殺気立っている極右団体の危険性を熟知しているからだ。
偽情報は、意図的に広められる虚偽情報で、単に間違った情報に過ぎない誤報とは根本的に異なる。
エイブラムス在韓米軍司令官が13日、記者会見を行い「断言はできないが、(朝鮮に)感染者がいると確信している」と語りニュースになった。 目的は朝鮮にコロナ感染が広がっているという根拠もない偽情報をばら撒くことにあったと見られる。 ソウルにいた同司令官が通常行わない米国民向けテレビ会見をわざわざ行ったこと、会見の主テーマが「朝鮮のコロナ感染」であったこと、などが物語っている。 エイブラムス司令官が「断言」できない「確信」と言っているのは、自らが根拠はないと告白しているようなものだ。 この記者会見に歩調を合わせるかのように、前日の12日にはデストロ国務相次官補が朝鮮への「ウィルス流入可能性」を吹聴した。
米国防、国務の高官が足並みをそろえて偽情報を流布した背景には、朝鮮で2月28日から3月12日にかけて行われた大規模な火力打撃訓練があった。 米韓合同軍事演習が米韓軍内にもコロナ感染が広がり中止されたのは周知の事実。 米韓合同軍事演習中止を後目に朝鮮は約2週間にかけて軍事演習を行った。 米韓とは異なりコロナ感染がなくウィルス拡散の危険が皆無であったことが訓練を可能にしたのだ。
朝鮮と米韓がコロナ感染をめぐり対称を描く中で伝えられた、南の同胞を気遣う金正恩委員長のメッセージに多くの韓国民が肯定的に反応したと伝えられる。 普通なら親書に噛みつき文在寅大統領攻撃の材料にする野党勢力・親米右翼勢力がなぜか沈黙せざるを得なかった。 約一月後の総選挙を前に、金正恩委員長の親書とメッセージに好感を示した、多くの韓国民を敵に回しかねないとの憂慮が沈黙を強いたとソウルから伝えられた。
対朝鮮敵視政策を貫く米国と、追従する親米右翼勢力にとって、決して受け入れがたく容認しがたいことであったことは想像に難くない。 特に長い間植え付けられてきた韓国民の「同族敵視感情」が弛緩し、朝鮮の指導者からのメッセージに好感を示す世論の流れは、米国と情報機関にとって放置することができない危険な状況と映ったであろう。
巻き返しを狙う米韓の情報機関が「情報工作」に走ったのは当然であった。 この「情報工作」の具体的内容を練り上げるのは、朝鮮についてよりよく知る(程度は極めて低レベルだが)国情院の「北朝鮮チーム」であることに疑いはない。 世界でそれ以外に朝鮮に関する「情報工作」を担える知能も人材もない。
韓国の情報機関は、朝鮮は軍事訓練を行いコロナ感染による動揺を鎮め引き締めを計っているとの情報を流布したが、あまりにも稚拙で説得力もなかった。 もし本当に朝鮮でコロナ感染が広がっているなら、軍事訓練が感染を一層拡散しかねないからだ。
そこで考案されたのが、金正恩委員長が「感染を警戒し平壌を離れている」とする軍事訓練を名目にした「逃避」説。 それに加え、「朝鮮ではコロナ感染が蔓延」していて、金正恩委員長の親書は「支援の要請」で「SOS」だと卑下、親書に好感する韓国世論の沈静化を図り、朝鮮でのコロナ感染を印象付けようとした。 情報機関が練り上げた偽情報は、「朝鮮日報」をはじめとする親米右翼のマスコミを通じて流布する一方で、「デイリーNK」のような別動隊を通じて「180人死亡」などの荒唐無稽な偽情報をばらまいた。
これを下地に、「韓国の消息筋」「関係筋」との曖昧模糊なニュースソースで日本のマスコミに取り扱わせることは今までも繰り返されてきた常套手段。 「朝日新聞」、NHKなどは韓国情報機関の狙い通りに「関係筋」発の偽情報を報道している。 また金正恩委員長が送った親書は「SOS」であるとの、TBSでの姜尚中氏の発言(3月15日)も同様だ。 ちなみに「デイリーNK」だが、2007年ころから「北朝鮮民主化ネットワーク」の名でインターネットサイトを運営している国情院の別動隊。 CIAと深い関係にある全米民主主義基金(NED)が多額の資金提供している。 2018年に27万ドル提供しており、韓国情報機関運営、CIA後援の謀略団体と見て間違いない。
振り返ってみれば、朝鮮にコロナ感染が蔓延してるかのような米日韓マスコミの合唱は、エイブラムス在韓米軍司令官の「断言できない確信」発言を頂点にした、ワンセットで仕組まれた「情報工作」であったようだ。
一見良く練られた「情報工作」のようにも見えるが、いかんせん朝鮮の現実とは大きくかけ離れており底が浅い。
金正恩委員長が3月17日、平壌総合病院の着工式に参加し演説したことで、懸命に築き上げた「情報工作」はもろくも崩れ去った。 「正恩氏はこの間、平壌に戻っていない。人口密度が高く外国人も多い平壌を避けているようだ」(朝日新聞デジタル3.10)等々のニセ情報はもはや笑い話でしかない。
朝鮮でのコロナ感染をでっち上げる偽情報は数多くあったが、朝中国境に近い平安北道薪島郡が新型コロナ感染で「閉鎖」されたとの説は、米国の国営ラジオ「自由アジア(RFA)」が2月にでっち上げたニセ情報のひとつ。 日韓の多くの下請けライターが報じたが、「労働新聞」が3月7日付けで薪島郡で2月末までに数万トンの葦の収穫を終えた、と報道したことであっさり否定された。
このように数多くの偽情報は、朝鮮の実際を何も知らずに机上で作文したもので、その手法は虚偽情報であることが暴露されようがされまいが、呼吸をするように次々とでっち上げ垂れ流すことだ。
火の無い所に煙は立たない、というが、火の無い所に煙を立てるのが欧米プロパガンダであることを心すべきだ。(M.K)
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