M.K通信 (67)新型コロナパンデミックの中で感染者0を維持する朝鮮

人民の生命安全を最優先

新型コロナウィルス感染症が世界的に大流行し人類を襲っている。 4月12日24時現在、世界210の国と地域に広がり、185万1734人が感染し11万4177人の貴重な生命が奪われた。

類例を見ない惨状が地球規模で繰り広げられるパンデミックの中で、朝鮮は新型コロナウィルスの国内への流入を食い止め一人の感染者も出していない。 未知のウィルスの危険性をいち早く見抜き迅速に国境を閉鎖するなど感染路を断ち防疫予防を徹底させた危機管理がもたらした結果だ。

11日と12日に続けて開かれた朝鮮労働党中央委員会政治局会議と最高人民会議第14期第3回会議の結果を見れば、一人の感染者も出ていないとする朝鮮の主張に疑いの余地はない。

党政治局会議では超特急非常防疫措置を稼働させたことにより「非常に安定的な防疫形勢を維持」していると指摘、パンデミックなどの対内外環境から12月党全員会議決定貫徹において一部政策的課題を調整変更させる対策が講じられ、党中央委員会、国務委員会、内閣の共同決定書「世界的な大流行伝染病に対処してわが人民の生命安全を保護するための国家的な対策をより徹底させることについて」を採択した。

決定書は、感染者0を前提に、「国家的な非常防疫事業を引き続き強化し、今年の経済建設と国防力強化、人民生活安定のための具体的な目標と党、政権機関、勤労団体、武力機関をはじめ全ての部門、すべての単位の闘争課題と方途」を明らかにしている。

最高人民会議での内閣の報告は、この共同決定を実行することを中心課題とし、全てを人民の健康と生命安全の保障に服従させる原則に基づいて経済活動の作戦を立てて、自力自強の精神をもって正面突破戦を果敢に繰り広げることを強調している。 また感染症と関連しては「まだ一人の感染者も発生していない」と指摘、引き続き感染症の流入を阻止する非常防疫をより強化することを強調、予算編成で保健部門の予算を昨年比107.4%に増額することを決めている。

朝鮮が非常防疫体制に突入するに際して社説を掲載した労働新聞(2月1日付け)は「人民の生命安全をしっかり守ることはわが党と国家の最優先重大事」と指摘していた。 党政治局会議、最高人民会議でこの原則を改めて確認した形だ。

朝鮮に感染者が出ていないことは、2月中旬にオ・チュンボク保健相が、また4月はじめには朴名帥朝鮮国家衛生検閲院院長が外信記者に明らかにしていた。 朝鮮労働党の最高意思決定機関である党政治局会議、最高人民会議で内閣が感染者0であることを確認したのはもちろんはじめてのこと。

破綻したプロパガンダ

朝鮮に新型コロナウィルス感染症が広がり死亡者も出ているとする、米日韓のプロパガンダはここに来て完全に否定され破綻したと言える。

最高人民会議には、朝鮮国務委員会第1副委員長である最高人民会議常任委員会の崔龍海委員長(朝鮮労働党政治局常務委員)、朝鮮国務委員会副委員長である朝鮮労働党中央委員会の朴奉珠副委員長(同)、朝鮮国務委員会委員である金才龍内閣総理(朝鮮労働党政治局委員)、国務委員会、最高人民会議常任委員会のメンバー、600人を超える代議員が全国から参加した。 党,政、軍の要人に地方の核心幹部が一堂に会したばかりか高齢者の比重も高い。 一部で流布されているように朝鮮で感染症が拡大していたなら党,政、軍の要人を危険にさらしかねず、最高人民会議の開催は感染症を抑え込んだとの確信と自信の表れであるとみて間違いない。

もともと朝鮮で感染症が拡大しているとの説には根拠が何もなく、米日間の当局者は悪意に満ちた推測か、もしくは印象操作に終始した。 また自由アジア放送(RFA)CNNなどのマスコミ、「デイリーNK」のような米韓情報機関の別動隊、「朝鮮日報」「中央日報」「東亜日報」など韓国の親米右翼紙は、情報機関を頼りに偽情報を作文し続けた。 卑劣なのは日本のマスコミで、「朝日新聞」などは偽情報が広く流布されたのを見計らって不確かな「関係筋、情報筋」をソースに「ソウル発」で情報機関のプロパガンダを日本で流布する役割を担った。

いずれも稚拙で悪意に満ちたプロパガンダであり、米日韓の朝鮮報道は感染症問題に限らず悪質な「悪魔化」キャンペーンに終始している。 コロナプロパガンダはこの「悪魔化」キャンペーンの一環で、嘘、偽情報と印象操作で「コロナが蔓延する平壌」という虚構の建物を描こうとした。

「全く分からない」

例えばエイブラムス駐韓米軍司令官が3月13日突然米国民向けテレビ会見を行い「断言はできないが、(朝鮮に)感染者がいると確信している」と述べたこと。 「断言」できないが「確信」という奇妙な発言自体が根拠なきプロパガンデであることをはじめから示すもので、後に平壌駐在外交官の規制が解かれ感染者なしとの朝鮮側の発表が説得力を持つにいたると、自身の発言は「諜報」に依拠したものであるかのような弁明を重ねた。 軍司令官らしからぬ弁明で朝鮮の軍が1か月動かなかったことを根拠に挙げた。

朝鮮で軍が動かなかった1か月は、国境を閉じる直前までの入国者、接触者、疑わしい病状の外国人、人民を隔離し医学的監視を行い、感染症の流入いかんを確認する1か月であったことは今となっては周知の事実だ。もちろん軍も例外ではなかった。 1か月の確認期間を感染症の根拠に挙げた漫画のようなエイブラムス発言は皮肉にも駐韓米軍の「諜報」の実体をもさらけ出した。

米軍制服組トップのミリー統合参謀本部議長は14日、朝鮮での新型コロナウイルスの感染状況について情報が乏しいと述べている(時事通信4月15日)。 またロイター(3月31日)は米政府筋は、新型コロナウイルス感染の実態把握に奔走しているが「中国、ロシア、北朝鮮では自らの情報収集力に限界を感じている」と述べており、「ある米政府筋は北朝鮮国内の感染の規模については全く分からないと語った」と報じている。 これが実体であろう。 「分からない」のにプロパガンダをしようとするから「確信」なき「断言」と言わざるを得ないのではないか。

日本外相の印象操作

茂木外相3月24日、記者会見で「中国、韓国と地続きの北朝鮮で、全く感染者がいないということなら奇跡的だ」「人類史上、そういった事態は考えられない」などと述べたことは、悪質な印象操作の実例。 茂木外相は「韓国と地続きの北朝鮮」というフレーズをコロナ感染流入の根拠に挙げているが驚くしかない。 軍事境界線に隔てられ4キロの非武装地帯があり人の往来が全くな朝鮮半島の現状で、南から北へのコロナ感染は100%ありえない。 日本の外相がこれを無視して感染を云々したのは、明らかに意図的な印象操作であろう。 知らなかったとすれば無知のそしりを免れない。

また長い朝中国境云々も詭弁だ。 朝鮮は武漢と国境を接していない。 接しているのは遼寧省と吉林省。 中国で両省に感染症が飛び火した時すでに朝鮮は国境を閉鎖していた。 さらに遼寧省、吉林省での感染状況を見ると、2月19日の時点で遼寧省が121人、吉林省が90人。  3月19日の時点では、遼寧省で累計感染者126人、死亡1人、退院122人、吉林省でそれぞれ93人、1人、92人(中国本土における2019年コロナウイルス感染症の流行状況・ウィキペディア)。  2月19日頃を頂点に終息に向かったことがわかる。 国境を閉じれば十分に感染症の流入を防止することができるレベルであることがお判りいただけると思う。

明らかになったでたらめ報道

RFA、CNNなどのマスコミ、「デイリーNK」、韓国の親米右翼紙が報道し、朝日新聞などが追従した偽情報のでたらめぶりもすでに明らかになっている。

例えば、朝中国境に近い平安北道薪島郡が新型コロナ感染で「閉鎖」されたとの説が流れたが、これは米国の国営ラジオ「自由アジア(RFA)」が2月にでっち上げた偽情報のひとつ。 日韓の多くの下請けライターが報じたが、「労働新聞」が3月7日付けで薪島郡で2月末までに数万トンの葦の収穫を終えた、と報道したことであっさり否定された。

傑作なのは、金正恩委員長が「感染を警戒し平壌を離れている」とする軍事訓練を名目にした「逃避」説。 金正恩委員長が3月17日、平壌総合病院の着工式に参加し演説したことでもろくも崩れ去ったが、朝日新聞が「正恩氏はこの間、平壌に戻っていない。 人口密度が高く外国人も多い平壌を避けているようだ」(朝日新聞デジタル3月10日)と報じていたことを忘れないほうがいい。 リベラルを気取る朝日新聞の朝鮮報道は、韓国の親米反共右翼紙とあまり変わらず、偽情報道もいとわないということを記憶に止めるべきだ。

コロナパンデミックは人類が力を合わせて対処すべき感染症だ。 しかし米国は自国の惨状も顧みず、感染症を「武器庫にしまっておいた兵器」のように利用しようとしている。 朝鮮に感染が蔓延しているかのようなプロパガンダもそのひとつで、米国の侵略的で非人道的なプロパガンダに踊らされてはならない。

コロナ感染によって「命の選別」までせざるを得ない厳しい状況の中で、感染症の政治利用は犯罪的だ。

一部では、感染の拡大で西側の先進国といわれる国々が医療崩壊に直面している原因は医療資源の削減を強いてきた新自由主義にあると指摘されている。

類例のない災いが各国の政治経済と国際関係にどのような影響を及ぼすのかまだ見えてこないが、この惨状を招いたツケは必ず払わされえることになろう。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。