「対北朝鮮ハイブリッド戦争」
北と南の間で問題になっている、脱北者によるビラの散布には米CIAが深く関与している。 米国の情報機関が、朝鮮に外部の情報を流入させることを目的に莫大な予算を支出して行っている情報工作だ。
数十万枚から100万枚に上る、朝鮮の指導者と制度を中傷するビラを気球に載せて送り込む。 時にはビラだけではなく、ドル紙幣を、また海を通じて米を入れたペットボトルを流したりもする。 昨年だけでも10回、今年にもすでに3回行われている。
目的は明らかだ。 指導者を中心に固く団結して強固な社会主義体制を構築して、超大国米国と対峙する朝鮮に西側の情報を流入させ、内部から体制の動揺を誘い最終的には体制を崩壊させるためだ。
米国がリビアやウクライナ、シリア、南米のボリビアなど多くの国で実行したカラー革命が狙いだろう。 ただ朝鮮の場合、米情報機関の数十年にわたる工作にもかかわらず、米国は朝鮮内部に拠点を作ることができず、主に軍事境界線の南側からアプローチせざるを得ない状況だ。 目に見えない朝米の情報戦で、米国は朝鮮の強力なディフェンスに穴をあけることができずに、ビラ風船という稚拙な方法にしがみついていると言える。
本サイトで報じているが、米国はソウルに「北朝鮮の民主主義と人権のためのネットワーク」を築いている。 「デイリーNK」や「Radio Free Chosun、Open North Korea Radio」などの「統一メディアグループ」と称される謀略的なプロパガンダ機関、ビラ散布を担っている「自由北韓運動連合」、「クンセム(大きな泉)」と「NAUH」などの「脱北者人権団体」がこのネットワークに含まれている。
「政治と帝国に関する独自の調査ジャーナリズム」として知られる「THE GRAYZONE」(https://thegrayzone.com/)のアシスタントエディターで著名なジャーナリストであるベンノートン は、「北朝鮮の民主主義と人権のためのネットワーク」は「北朝鮮に対するハイブリッド戦争」を行うメディア装置であると指摘している。
ベンノートン によれば、ビラ散布は「対北朝鮮ハイブリッド戦争」の一つの形態なのだ。 「デイリーNK」とCNNが4月にでっち上げた「健康異常説」もまた「ハイブリッド戦争」の一環で、朝鮮の最高指導者に照準を合わせたブラックプロパガンダであったと言えよう。 「VOA」(1月10日)の報道によれば、CIAと緊密なNED(全米民主主義基金)は、2016年から2019年の4年間で、「対北朝鮮ハイブリッド戦争」を行うメディア装置に2100万ドルを支出したという。
二年にわたり約束が反故に
文在寅大統領は2018年4月の北南首脳会談で、このビラ散布を含む敵対行為の中止に合意した。 この約束は首脳会談の結果発表された板門店宣言に明記されている。 さらに、この年の9月に行われた平壌首脳会談時に交わされた軍事合意書にも敵対行為中止が盛り込まれた。 文在寅政権は4・27板門店宣言によって「敵対行為の中止」が始まった2018年5月1日「対北朝鮮ビラマキ関連の政府の立場」を発表している。 「ビラまきの中止は軍事的緊張緩和、国境地域住民の安全、社会的軋轢の防止のために重要だ」とし、立法など、関連対策を検討するとした。
しかし「立法など、関連対策」が立てられることはなった。 「検討」とは言葉ばかりで「検討」された痕跡すらない。
放置されてきたのだ。 ここに問題の本質が潜んでいる。
当然、文在寅政大統領自身が首脳会談で合意した約束を履行する「対策」が立てられず放置されてきた原因がどこにあるのか、ということに関心が向かざるを得ない。
一か月や二か月ではなく、何と二年にわたり約束が反故にされ「敵対行為」が繰り返されてきた事は、正常でも、普通でもなく、あってはならない異常な事態だ。 いくら複雑な関係にあるとしても、これを正常だと捉えるなら首脳会談の意味がない。
しかし、文在寅政大統領は、なぜ二年にわたり約束が反故にされてきたのか、という疑問に一切答えようとしていない。 実に不誠実だと言わざるを得ない。
上述したように、「脱北者」によるビラ散布は、米国の「対北朝鮮ハイブリット戦争」を遂行する一つの方法として強行されてきた。 風船ビラを軍事境界線を越えて送り込むのは休戦協定にも抵触する挑発行為、敵対行為で、北側の対応によっては武力衝突のきっかけになりかねない危険な行為だ。
このため平和と共同繁栄を目指した北と南の首脳会談でこの問題が取り上げられ、中止に合意したのは当然のことであった。
にもかかわらず、文在寅政大統領は約束を反故にしてこの危険な敵対行為を黙認、助長してきた。 米国の「対北朝鮮ハイブリット戦争」に加担してきたとのそしりを免れない。
文在寅政権が首脳会談の合意も反故にして「敵対行為」を続ける根底には、民族の問題を北と南が力を合わせて解決するのではなく、米国に依存して「解決」してみようとする根深い対米事大主義が横たわっている。 また北と南の制度を尊重するのではなく、北の社会主義制度を否定し、米国の力を借りてドイツ式体制統一を目指す対決姿勢にある。 自らの約束を反故にしてまで、北の体制崩壊を追及する米国の「見えない戦争」の手先の役割を果たしてきたのはこのためだと言えよう。
稚拙な風船ビラの問題をきっかけに、北南関係が破綻の危機の直面したのは、文在寅政権の対米事大主義と同族対決姿勢が招いた当然の結果だ。
「背信と挑発」「極度の幻滅と怒り」
11日、朝鮮外務省のクォン・ジョングン米国局長は、この問題と関連して「失望」を云々した米国を非難した談話で、「背信と挑発だけを繰り返してきた米国と南朝鮮当局に対して我々が感じている極度の幻滅と怒り」は極めて大きいと言及した。 米国と歩調を合わせて「敵対行為」を野放しにしてきた文在寅政大統領の行動は「「背信と挑発」以外の何物でもないというのが北側の視点であることを示している。
北側は、文在寅政権の敵対行為に対抗して、「対南事業」を「対敵」に転換し、最初の措置としてすでに南北に通された通信線を遮断した。
南側の出方によっては、すでに予告している連絡事務所の廃止、開城工業団地の完全撤去、軍事合意の破棄などの措置が順次講じられよう。
現在統一部が軍事境界線でビラを散布した「脱北者団体」の法人設立許可を取り消すとしているが、「脱北者団体」の代表は「文在寅は・・・阻止できない」と豪語している米CIAが背後にんでいるからだろう。
文在寅政権がこの問題を根源から解決するには対応するしかない。
法人設立許可を取り消しても、ほとぼりが冷めれ名前だけ変え再び「敵対行為」を繰り返すことは目に見えている。
このまま北南関係が破綻するのか、紆余曲折を乗り越えて平和と共同繁栄の道を歩むのか、文在寅政権の対応次第だ。(M.K)
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