「クズ」は変わらず「クズ」

コリョ・ジャーナルボルトンはやはりボルトンだった。

朝鮮は16日、予定されていた南北高位級会談の中止と無期限延期を韓国側に通告した。 そこには、板門店共同宣言の精神に逆行する反対勢力の動きを抑えきれない韓国政府に対する不満と、間近に迫る朝米首脳会談に水を差すように米韓合同空中戦闘訓練「マックスサンダー」を強行したアメリカに対する強い警告が込められていた。

間髪入れず、朝鮮外務省の金桂官第1次官が談話を発表、「トランプ行政府が朝米関係改善のための真情性をもって朝米首脳会談に臨む場合、我々の当然な呼応を受けるようになるが、我々を隅に追い込んで一方的な核放棄だけを強要しようとするなら、我々はそのような対話にこれ以上興味を持たず、近づく朝米首脳会談に応じるかを再考慮するしかないであろう」と警告した。

金第1次官は談話で、対朝鮮強硬発言を繰り返すボルトン米大統領国家安保補佐官の名を挙げ、「我々は既に、ボルトンがどんな者であるかを明白にした事があり、今も彼に対する拒否感を隠さない」と非難した。

朝鮮とボルトン氏の因縁は10数年前に遡る。

対朝鮮超強硬派と目されるボルトン氏が朝米関係の表舞台に登場してきたのは、ブッシュJr大統領の時代。

ブッシュJr大統領の任命を受け2005年8月からUN駐在米国臨時大使として就任したが、2006年7月に共和党が中間選挙で惨敗した煽りを受け、米上院での正式批准を受けられぬまま2007年1月自動失職となる憂き目に遭った。「クビ」というのはプライドが許さなかったのか、ボルトン氏は辞表をブッシュJrに提出、2006年12月にUNを退職した。

このわずか一年強の間、ボルトン氏はそのタカ派ぶりを存分に発揮、朝鮮や敵対国に対して超過激発言を繰り返し悪態をつき続けた。 さすがの朝鮮も堪忍袋の緒が切れてボルトンを名指しし「人間のクズ、吸血鬼」と原色的な非難を浴びせた事がある。

ボルトン氏の辞職を知らされた時、UN事務総長だったコフィー・アナン氏は「ボルトン氏がやっと人々が望む事をした」と評したと言うのだから、ボルトン氏がいかに人格的に問題があり、周囲に悪意をまき散らし、嫌われていたのかは想像に難くない。

時折、突発的な強硬発言で注目される事はあるものの、「在野の人」として11年以上表舞台に立てなかったボルトン氏は、2018年3月トランプ大統領に拾われ、彼に阿る発言で取り入って4月9日、国家安全保障補佐官に就任した。

当初は「大統領に助言はするが彼の意に従う」としていたが、やはりボルトンはボルトン、すぐに持論と強硬発言を繰り返し、朝鮮の激しい怒りを買うに至った。

ボルトン氏は自分の立場を弁えていない。 そもそも、今回の朝米首脳会談を持ちかけたのはアメリカ側、トランプ大統領の意志によるものだ。

見方によれば、トランプ大統領がポンペオ国務長官に対話交渉役を、ボルトン氏に圧力役を任せて使い分けているように見えなくもない。 しかし、ボルトン氏は図に乗りすぎた。 朝鮮のプライドを傷つけ怒らせた。

朝鮮は「トランプ行政府が朝米関係改善のための真情性をもって朝米首脳会談に臨む場合、我々の当然な呼応を受けるようになる」との立場を既に明確に示している。

繰り返すが、朝鮮はやると言ったらとことんやるし、やらないと言ったら絶対にやらない。真摯性を以て接してくる相手にはしっかり応えるし、その逆も然りだ。

トランプ大統領は「朝鮮から連絡はない。様子を見よう。」と言っているが、ボルトン氏を最期まで庇う気はない。 不要と判断すればすぐに「クビ」にするだろう。 その方がスムーズに進むに違いない。

歴史は動く。 時代も変わる。 もはやボルトンのような「空気の読めないネオコン」の出番はない。(Ψ)

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。