M.K通信 (79)米国が敵対政策を最後まで追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にない

米大統領選挙を控え、朝鮮はトランプの再選を望んでいるとVOAが2日報じた。 またVOAは、朝鮮がトランプを望むのは首脳会談を行い親交があるためだが、バイデンが当選しても対話再開へと動くだろうという専門家の予測を伝えた。

米国と韓日、西側で専門家とよばれる人たちの共通した見解のようだ。

愚かな専門家の分析

本当に朝鮮が米大統領選挙後に朝米対話へと動くのだろうか?

どうも、朝米非核化会談は破綻した、との朝鮮の立場を理解しようとしない、もしくは理解できない専門家ならぬ専門家の我田引水な分析にように思える。

トランプ政権が続いても、バイデン政権が登場しても、朝鮮が朝米対話に動く、政策的理由、合理的根拠は何も見当たらない。

米韓日と西側のエセ専門家が、朝鮮が対話に動くと分析する根底には、リビアやイラクでの成功体験に酔いしれる超大国の傲慢な姿勢が潜んでいるように見える。 おそらく「弱小国朝鮮が米国の圧力にいつまでも抵抗できない」と見ているようだ。

ソ連崩壊から30年、米国は朝鮮に一貫して「先非核化」を求め様々な圧力をかけ続けてきたが、招いたのは2017年の「国家核戦力完成」宣言で、米国本土を脅かすICBMと水爆を目の当たりにした。 また2018年のシンガポール首脳会談から2年以上経過したが、米国の思い通りに事は運ばず、「ビッグディール」にみられる「リビア方式」、尊大な「先武装解除」論は朝米非核化交渉の破綻を招いた。

「弱小国」と見下してきた朝鮮の「レジームチェンジ」を実現できず、中露に続き米本土を打撃できるICBMの保有を阻止できなかった失敗から何らの教訓も得ることなく、我田引水の分析を繰り返す専門家の主張は愚か極まりない。

敵対政策撤回なしに対話なし

現時点で朝米の対峙点は、米国の対朝鮮敵対政策の撤回か否かにあるのであって、「非核化対制裁解除」にあるのではない。

「『非核化措置対制裁解除』という過去の朝米協商の基本主題が、これからは『敵対視撤回対朝米協商再開』の枠組みに変わらなければならない」(朝鮮労働党金與正党第1副部長談話、7月10日)との指摘が代表的だが、朝鮮外務省によるこの趣旨の発言、指摘は、読めば誰でもわかる表現で繰り返されている。

この原稿のタイトルである、「米国が敵対政策を最後まで追求するなら朝鮮半島の非核化は永遠にない」とは、昨年暮れに行われた朝鮮労働党中央委員会第7期第5回総会で行った金正恩委員長自身の発言である。

トランプ大統領がハノイで、「先非核化」を核心的内容とする「リビアモデル」を焼き直した「ビッグディール」を持ち出したのは周知の事実。 これに対して朝鮮は「計算方法」をかえるよう求めたが米国は聞き入れなかった。 「非核化は永遠にない」とは、米国の敵対的姿勢に対する朝鮮側の答えだ。

以来朝鮮は、▲一方的非核化を求める朝米非核化交渉には応じない ▲圧力と制裁を正面突破し、制裁に恋々としない ▲朝米対立が長期化するのは避けられず、核抑止力を引き続き強化する ーとの姿勢を鮮明にしている。 李善権外相が去る6月12日、シンガポール朝米首脳会談2周年に際して発表した談話で「朝鮮の変わらない戦略的目標は、米国の長期的な軍事的脅威を管理するためのより確実な力を培うことである」と指摘したのは、米国の一方的非核化要求に対する、朝鮮のゆるぎない姿勢を示したものだ。

このような朝鮮の政策的立場から見て、米国が「先非核化」を求める限り、朝米交渉に応じる可能性はないとみるのが妥当なようだ。

誰が米国大統領に選ばれるかは、朝鮮にとって大事なことではない。 問題は政策だが、トランプであれ、バイデンであれ、対朝鮮敵対政策に変わりはない。 また米国が「先非核化」を追求する限り、トップダウンであれ、ボトムアップであれ、意味はないということだ。

「先非核化」を前提にした「終戦宣言」の罠

オブライエン米大統領補佐官は10月28日、「核兵器は(北朝鮮に)安全保障をもたらさないが、それを除去すれば北朝鮮は無限の潜在力を持つことができる」と述べ、「先非核化」を求めた。 昨年2月ハノイでトランプ大統領が朝鮮に「ビッグディール」を飲ませるために持ち出した、3歳の子供も騙せない稚拙なトークの繰り返しだ。 また文正仁韓国大統領統一外交安保特別補佐官も27日、ソウル市内で開催された「韓中日平和フォーラム」で「核を保有していれば生存と繁栄を保障できない」などと述べた。 米国が執拗に「先非核化」を求め、文在寅政権がオブライエンに歩調を合わせていることを示している。

朝鮮の安全は朝鮮自身が保障する。 誰も守ってくれない。 ましてや、休戦状態にある敵対国である米国が保証してくれると考えるのは大バカ者であろう。 さらには米国に隷属するかいらいに過ぎない韓国に、朝鮮の生存と繁栄をもたらす意思も能力もないことは日を見るより明らかだ。 朝米非核化交渉に応じない朝鮮の決然とした姿勢になす術を失った焦りの表れであろう。

文在寅韓国大統領が言及した「終戦宣言」(9月)も同様で、朝鮮を非核化交渉に引っ張り出すことを狙った”甘い蜜”とみられ、腹には剣が隠れている罠だ。 ポンペオ米国務長官が10月21日に「北朝鮮の非核化が、朝鮮半島の“終戦宣言”へとつながる」と述べたことはそれを示している。 また李秀赫駐米韓国大使も10月28日に行った、ワシントン駐米韓国大使館で開かれた特派員懇談会で「北朝鮮の核は廃棄されなければならず、それに伴う韓半島の平和体制構築を願う方針は、米国の民主・共両党とも確認している」と述べた。

さらには、10月14日に発表された、韓米安保協議会共同声明には「北朝鮮の完全な非核化と弾道ミサイルプログラムの廃棄を通じた韓半島の恒久的な平和定着」を云々している。 米大統領選挙を前に米韓が朝鮮の一方的非核を求めることで足並みを揃えた形で、結局「終戦宣言」も「先非核化」を前提にしたものであることを示している。

朝鮮労働党創建75周年に際して行われた朝鮮人民軍の閲兵式は、米国が敵対政策を続け「先非核化」に固執する限り、核抑止力を強化するとした朝鮮の姿勢表明がただのスローガンではなく、実体を伴った決意であることを見せつけた。

圧力で朝鮮に非核化を強要することはできない。 また文在寅大統領がくり返す稚拙な口蜜腹剣の手法では誰も騙すことができない。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。