米大統領選挙結果がまだ出ていないのに、韓国、日本ではバイデンの当選を既成事実化して、朝米関係を論じるでたらめでレベルが低い「解説」 が横行している。
米大統領に誰がなるかも決まっていないのに、朝米首脳会談をトランプ非難の材料にすると同時、返す刀で朝鮮を中傷する非論理的な主張が後を絶たない。 バイデンの意向に沿ったこのような「説」はあまりにも低レベルでいちいち論評する価値もない。
しかし、ここで朝米関係を展望するにあたり確認しておくべきことがある。
米国の大統領に誰が選ばれても、また米国がいくら欲しても朝米非核交渉はもうないということだ。
「北朝鮮の非核化」を追求するトランプ&バイデン
トランプ政権が選挙直前まで朝米非核化交渉の再開を望んでいたことは周知の事実。 またバイデンが選挙キャンペーン中に朝鮮の「核の縮小」が交渉の条件であると発言している。
これは敵対、体制崩壊で一貫する米国の対朝鮮政策において当面の焦点が、彼らの言う「北朝鮮の非核化」にあることを示している。
トランプであれバイデンであれ、共和党であれ民主党であれ、「北朝鮮の非核化」を追求する敵対政策になんの変りもない。
「北朝鮮の非核化」は米国にとって最優先課題にならざるを得ないからだ。
朝鮮の核はICBMとSLBMを伴っており、中露に加え米本土を直接打撃できる。 加えて朝米間は今、休戦という名の戦争状態にあり、平和は築かれていない。 この意味では中露の核が潜在的脅威なのに比べ朝鮮の核は現実的な脅威だ。 朝鮮は核先制攻撃を公然と叫ぶ米国に対して、核先制攻撃は米国の専売特許ではないと言い放っている。 朝鮮半島での核戦争はワシントンやニューヨークが核の炎で焼かれることを覚悟しなければできるものではない。 朝鮮が核攻撃の報復できないと考えるのはこの上ない愚か者だ。
さらに中露はNPT核保有国。 朝鮮はNPTから脱退しており、朝鮮の核はNPT体制に依存する米国の核覇権を揺さぶって余りある。 この意味で誰かが認めようが認めまいが、朝鮮は国際秩序形成に大きな影響力を持つ戦略国家に浮上した。 一部で米国の「北朝鮮に対する優先度は低い」とする評論があるが、あまりにも間が抜けた言説だ。
朝米平和会談が枠組みだ
朝鮮が核兵器を開発したのは、米国の核の脅威に対抗するためだ。
米国はソ連崩壊後、朝鮮に核の脅威を加えながら、朝鮮の「非核化」を叫んできた。 のど元に刃を突きつけ「殺すぞ」と脅しているのに対抗策を考えない大バカ者はこの世にいない。 クリントン、ブッシュ、オバマの24年間、米国が「非核化」を叫ばない日はなかったが、2017年11月「火星15」の発射成功で、朝鮮は「国家核戦力の完成」に至る。
オバマ政権を引き継いだトランプ大統領が朝米首脳会談(2018.6 シンガポール)を行い「朝鮮半島の非核化」を約束したのは必然の結果だった。
しかしトランプは、ハノイ首脳会談(2019.2)で「ビッグディール」を持ち出し、「朝鮮半島の非核化」を「北朝鮮の非核化」に置き換えた。 シンガポール首脳合意に対する裏切り行為であった。
朝鮮は2019年10月スウェーデン・ストックホルムでの朝米実務会談で、米国の裏切りと敵対政策を確認し朝米非核化交渉の終了を宣言するに至る。
この点について長く説明する必要はあるまい。 朝鮮の対米姿勢を示した金與正党第1副部長の談話(7.10)の核心部分を紹介するにとどめる。
・「非核化措置対制裁解除」という過去の朝米協商の基本主題が、これからは「敵対視撤回対朝米協商再開」の枠組みに変わらなければならない
・我々はトランプ大統領も相手にしなければならず、それ以後の米国政権、さらに米国全体を相手にしなければならない
・我々は制裁の解除問題を米国との協商議題から完全に捨ててしまった
多分、朝鮮側から発せられたメッセージを聞きわける能力に欠けているのだろう。 非核化交渉はもう終わった、敵対政策撤回、平和会談が枠組みだ、制裁はカード足りえない、というメッセージだが、米国はなぜか非核化交渉を求め続けている。
行き詰った朝鮮政策
まさか言葉を理解できないわけではあるまい。
であるなら、圧力をかければ非核化交渉に出てこざるを得ないだろう、という愚かな判断が根底にあると判断せざるを得ない。
朝鮮が一方的非核化は武装解除の要求で、体制崩壊の前奏曲と警戒しているのに圧力で・・・?
圧力が有効ならはじめから核抑止力開発を止められていたはずだ。 特にバイデンが中国を通じた圧力を云々しているが、トランプがすでに行ってきたことの二番煎じにすぎない。
大統領選挙に伴い乱れ飛ぶ乱説は、対朝鮮政策の行き詰まり、さらには道筋を見出せずうろたえる米国の姿を映し出している。(M.K)
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