バイデン政権の発足を既成事実化して、朝米関係をめぐる様々な見解や解説が飛び交っている。 それを眺めてみると、朝鮮を敵視する米韓日の勢力はバイデン政権に対する大きな期待を抱いているようだ。 期待とはもちろん、朝鮮を非核化へと追いつめてくれるはずだという根拠のない期待だ。
非核化交渉はもうない
トランプ政権継続であれ、バイデン政権であれ、朝鮮の姿勢は何も変わりない。
朝鮮はトランプ政権がハノイで「リビアモデル」を持ち出し、体制崩壊への企図を露わにしたことを契機に、米国が対朝鮮敵対視政策を撤回しなければ、朝鮮半島の非核化は永遠にない、というメッセージを送り続けている。
ドイツ駐在朝鮮大使が昨年12月、欧州議会議員との非公式のオンライン会合で、敵対視政策を撤回すれば米国と「強固な関係」を築く考えを示したのはその一例。 このメッセージを「交渉再開へシグナルを発した可能性」(ソウル、ワシントン時事 1.3)と見る向きもあるが、あまりにも我田引水な希望的な観測と言わざるを得ない。
朝鮮が様々な機会に発し続けているメッセージの内容は、▲朝米交渉は、制裁解除対非核化から敵対視政策撤回対交渉再開、へと枠組みを変えなければならない ▲経済制裁解除要求は議題から捨て去り、経済的圧迫には、自力更生、自立、自強路線で正面突破する ▲軍事的圧力には、核抑止力の絶え間ない高度化で対抗するーというもの。
一言で、敵対視政策撤回、に集約される。 つまり、朝鮮に対する体制崩壊への意図を捨てなければ交渉もない、というもの。 もっとわかりやすく言えば「朝鮮の非核化をめぐる朝米交渉」はもうないということだ。
破綻した戦争政策
朝米平和協定を拒否する米国の姿勢は対朝鮮敵対視政策の集中的な表れであると言える。 現休戦協定は敵対状態の一時的な停止に合意したに過ぎず、きっかけがあれば熱戦がいつでも再燃しうる。 この危険を取り除くためには、朝鮮戦争の当事者である朝米が平和協定を結んで戦争を終わらせなければならない。 これ至極当然なことだが、米国は頑なに平和を拒否して戦争を続けようとしている。 その意図は明白で、武力で朝鮮を屈服、打倒しようというもの。
朝鮮の核抑止力は、米国のこの露骨な敵対視政策、戦争政策に対抗したものだ。 朝鮮に対する非核化要求は戦争を続けながら、相手に武装解除を要求する傲慢な行為だ。
しかし米国の戦争政策は朝鮮戦争での敗北に始まり今日に至るまで失敗を余儀なくされており、朝鮮の「国家核戦力の完成」で破綻が決定的になったといっても過言ではない。
もはや米国には朝鮮に対する圧力手段は何もない。
今まで専売特許のように駆使してきた核の脅威は、朝鮮の核抑止力によって相殺され、経済制裁は朝鮮の正面突破戦によってカードとしての機能を失った。 トランプ政権が「史上最大の圧迫」と豪語した制裁から3年が過ぎても全く効果が見られず、「せどり」を云々し続けた挙句の果てに、賞金をだして「情報提供を求める」体たらくだ。 制裁が圧力手段として機能していないのは明らかなのに、「制裁」、「圧力」を繰り返すしかないところに米国の窮状をうかがうことができる。
「モンスター」登場で衝撃が
朝鮮労働党創建75周年を迎え行われた朝鮮人民軍の閲兵式で披露された新たな戦略兵器が米国に大きな衝撃を与えたことは想像に難くない。
周知のように米オープン・ニュークリア・ネットワークのメリッサ・ハナム副局長は、このミサイルを「モンスター」と呼び、カーネギー国際平和基金のシニアフェロー、アンキット・パンダ氏は「アメリカのミサイル防衛システムを圧倒するための多弾頭式への扉を開くものでもある」と衝撃を隠していない。
また、駐韓米軍に12年間勤務した後、米情報機関で2014年から20年まで「北朝鮮担当」を務めた、マーカス・カラウスカス氏は「北朝鮮が多弾頭ロケットを試験発射することを必ず阻止しなければならない」と主張、その理由として多弾頭ロケットは米国のミサイル防御を危険にさらすためだと述べ、朝鮮との交渉を早急に始めることを提言している。
外見を見ただけではこの辺が限界だろう。 「火星15」よりも大きいことから「多弾頭」と分析しているが、朝鮮は「火星12」で多弾頭実験を成功させており、米専門家の分析が的を得ているのか大いに疑問だ。
上述のアンキット・パンダ氏は新型ICBMについて、その進展を抑制する努力にもかかわらず、「北朝鮮がミサイル能力の質を向上させ続けていることを知らしめるもの」、「北朝鮮が固体燃料ICBMを配備していないからといって、その開発に取り組んでいないわけではない」と述べた。 ミドルベリー国際大学院モントレー校ジェームズ・マーティン不拡散研究センター長を務めるジェフリー・ルイス氏は、「北朝鮮の兵器庫はパレードで見せてくれたものしか存在しないと思ってはいけない」と指摘した。 いずれも、一般論として、軍事パレードでは最大30%の兵器しか公開されないことを念頭に置いた発言であろう。
金正恩委員長は閲兵式が行われた10月10日の演説で、「わが党はすでにわが人民の尊厳であり生命である社会主義を確固として守護し、わが人民が永遠に戦争を知らない土地で子々孫々繁栄できるように、平和守護ために最強の軍力を備蓄した」と指摘した。
また、朝鮮人民軍の朴正天総参謀長は昨年12月14日に発表した談話で、「力のバランスが徹底的に保障されてこそ、真の平和を守り、われわれの発展と将来を保障することができる。われわれは、巨大な力を備蓄した」と述べている。
米国が敵対視政策撤回に対する朝鮮のメッセージを無視して、一方的非核化を追求するなら核抑止力の高度化と一層の備蓄を招くことになろう。
朝鮮が朝米交渉を急ぐ理由は何もない。時間は朝鮮の側にあるからだ。(M.K)
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