韓米外交当局と国防当局の2+2(18日)は、米国にとって文在寅政権を膝まずかせ、米韓間の隙間風を封じ、韓日関係改善へと韓国に譲歩を迫り、さらには文在寅政権を対中国包囲網に参加させるために行った、格下隷属国に対する“圧力外交”であったようだ。
“黒い髪の米国人”
“黒い髪の米国人”という言葉がある。
親米派の巣窟である韓国の外務官僚を指す言葉だ。 “黒い髪の米国人”の外交当局と作戦指揮権を握る軍部を統括する国防当局との2+2は、外交というより、韓国人代理人にバイデン政権の方針を周知させ、文在寅政権を従わせるための茶番と言ったほうが実態を反映している。
ブリンケンは文在寅政権発足直後の2017年6月に「前政府(朴槿恵政権)では一貫した対北圧力キャンペーンを行なうのに米韓政府間に寸分の隙間もなかった。 新政府(文在寅政権)は異なる(対北)接近法を持っており、これは米国の外交を少し難しくする」と述べたことがある。
自身が国務副長官を務めたオバマ政権下では「寸分の隙間」もなかったのに、と退任直後に文政権を批判したのだ。 ブリンケンにとって今回の韓米2+2はこの「隙間」を埋めるためのものであったのだろう。
「同盟再構築」、朝鮮半島においては韓米同盟を「再構築」して米日韓三角同盟を強固にして「北非核化」に臨むのがバイデン政権の方針。 だが、韓米間の隙間を埋めれば「北非核化」を実現できるかのように立ち振る舞うブリンケンは、実はオバマ政権下で「北非核化」に失敗した張本人である。 「米韓政府間に寸分の隙間もなかった」、オバマ・朴槿恵政権時代に推進した「戦略的忍耐」は失敗した。 自らの失敗を顧みることもなく「同盟」を云々して、文在寅政権を「北非核化」の敵対行為に駆り出して圧力政策を展開しても、オバマ政権同様なんの進展を見ることはできまい。
“黒い髪の米国人”を動かして「同盟再構築」を演出し、朝米、北南関係を悪化させ朝鮮半島情勢を緊張させることは、朝鮮の核の高度化と韓国国民の反米感情を招くだけの愚かな行為だ。
米国にひれ伏し同族との全面対決へ
しかし、文在寅政権は米国にひれ伏し、北南対立と米日韓三角同盟への道に大きく踏み出した。
文在寅大統領は18日午後、2+2を終えたブリンケン国務、オースティン国防長官と会見した。 韓米2+2の結果を確認する場であったようだ。
この席で文在寅大統領は、朝鮮半島の非核化と韓日関係に対する自信の主張を大幅に後退させバイデン政権にすり寄る姿勢を見せた。
朝鮮半島の非核化に関して、文大統領は従来の「韓半島の非核化と平和プロセス」を「北朝鮮の完全な非核化を含めた韓半島平和プロセス」と言い換えた。 「朝鮮半島の非核化」なる表現は朝米首脳の共同声明、北南合意書にもみられ、これを覆し「北の非核化」に置き換えることは、曲がりなりにも堅持してきた対話路線を対決路線へとシフトさせることを意味し、朝鮮との全面対決を招くことになる。
「北朝鮮政策見直し」を云々するブリンケンが「北朝鮮の完全な非核化に専念する」と公言、朝鮮との対決姿勢を露骨化していたことは周知の事実。 文大統領の発言がブリンケン発言を受け入れたものであることは明らか。 文在寅政権は今までも北と南の板門店宣言、平壌宣言などを履行してこなかったが、ここにきてより一歩踏み込み、北南合意書をゴミ箱に投げ入れたと非難されても返す言葉はあるまい。 2+2共同声明で指摘された「完全に調律された対北戦略」が、朝鮮の一方的非核化を目指した極めて乱暴な対決戦略になることは火を見るより明らかだ。
これだけではない。 文大統領は会見の席でバイデン政権が発足当初から圧力を加えていた、「韓日関係の復元のために引き続き努力する」と述べた。 これに対して米国務、国防両長官は「進展することを期待する」と述べている。 まるで属国の大統領が宗主国の閣僚の前で行った決意表明のようで見るに忍びない。 韓国の民主化勢力は、韓国に無理やり日本との和解を強要して米日韓垂直同盟を作るのは、韓国に“日本の子分になれ”というものだと、怒りを露わにした。 しかし、文大統領は「努力」を決意し、格下であるはずの米閣僚は「期待する」と胸を張る、屈辱的な光景が目の前で繰り広げられた。 文在寅大統領の対米追従、事大主義がまねいた当然の結果とは言え見るに忍びない。
「両者政策対話」とは
韓米2+2で見過ごすことができないもうひとつの出来事がある。
韓米局長級会談が19日行われ「両者政策対話(Bilateral Policy Dialogue)」という定例の協議体を発足させることを決めたことだ。
「両者政策対話」は、去る2018年11月120日にトランプ政権下で発足した「韓米ワーキンググループ」のバイデン政権版と言える。 同年11月10日、トランプ大統領が「わが国が承認するまで、韓国は(制裁解除を)行わないだろう。 何事も、わが国の承認がなければ実行することはない」と述べたことがある。 米韓関係が従属関係にあることを如実に示した、有名な「承認」発言だ。
「韓米ワーキンググループ」はトランプの「承認」発言に沿って、文在寅政権の南北政策を監視、統制するためのもので、「ワーキンググループ」発足後、韓国は米国の承認なしには、一切の南北交流ができなくなった。
このため韓国では南北和解を妨げる「ワーキンググループ」に対する非難が強まり、韓米外務当局は世論の非難をかわすために、「ワーキンググループ」を「同盟対話」に衣替えすることに合意(昨年9月)、今回の2+2でその設置を決めた。
「両者政策対話は韓米外交当局局長級で重要関心事項について全般的に協議する定例協議体」と説明されているが、実態は“黒い髪の米国人”による韓国の政権監視と政権に対する米国の指示、命令を伝える機構であろう。
バイデン政権は、韓米2+2で文在寅政権を膝まずかせ、その行動を監視、統制する機構まで設けた。
米国にひれ伏す文在寅政権の姿は見るに哀れだが、対米事大主義が招いた当然の結果であろう。(M.K)
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