米国の対朝鮮政策の“見直し”をめぐり、米日韓の間で姑息な三文芝居が繰り広げられている。 あまりの稚拙さに開いた口がふさがらない。
サキ米大統領報道官は2日、バイデン政権の対北朝鮮政策の見直しが完了したとし、▲目標は「朝鮮半島の完全な非核化」、▲基軸は「調整された現実的なアプローチとなる」と述べた。
「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」
米国が本当に「朝鮮半島の完全な非核化」を目的にするなら歓迎すべきことだが、後の展開を見ると、「北朝鮮の完全な非核化」が本当の目的らしい。 「北非核化」では、敵対政策の撤回を求める朝鮮が対話に応じないのは明らかなため、「朝鮮半島の完全な非核化」という言葉を持ち出したらしい。 これで朝鮮側が興味を示すとでも考えたのなら愚か極まりない。 経緯を見るとどうも文在寅政権が持ち出した浅知恵のようだ。
話を進める前に「朝鮮半島の非核化」と「北非核化」の概念を整理しておく必要があるようだ。
朝鮮外務省は去る2018年12月20日に発表した「チョン・ヒョンの論評」で「朝鮮半島の非核化」の概念について次のように指摘している。
「朝鮮半島というとき、わが共和国の領域とともに、米国の核兵器をはじめとする侵略武力が展開されている南朝鮮地域を包括しており、朝鮮半島の非核化というとき、北と南の領域だけでなく朝鮮半島に照準を合わせた周辺からの、すべての核脅威の要因を除去することを意味する、ということをしっかりと知るべきだ」
これに比べ「北朝鮮の非核化」は文字通り、朝鮮だけの核抑止力をなくすことだ。
同じ「非核化」でも「朝鮮半島」と「北朝鮮」では天と地の差があることをお分かりいただけると思う。
敵対姿勢強める米日韓
話を戻そう。
米国は日本やEUの格下同盟国との間では「北朝鮮の完全な非核化」と強調し、米韓の間では「朝鮮半島の完全な非核化」と使い分けている。
例えば、去る4月16日に発表された「米日共同声明」には次のような一節がある。
「日米両国は、北朝鮮に対し、国連安保理決議の下での義務に従うことを求めつつ、北朝鮮の完全な非核化へのコミットメントを再確認するとともに、国際社会による同決議の完全な履行を求めた」
「北朝鮮の完全な非核化へのコミットメント」とは、何を指すのか明らかにされていないが、朝鮮はトランプ前大統領との間で交わした共同声明で、朝鮮半島の非核化について約束したことがある。 しかし、朝鮮側の一方的非核化については約束したことがない。
菅首相は米日共同声明発表直後にホワイトハウスで開かれた米日首脳の共同記者会見で、北朝鮮への対応においては「弾道ミサイルのCVID(完全かつ検証可能で不可逆的な非核化)に対する約束と、国連安全保障理事会の決議に基づいた義務に従うことを求めていくことにした」と説明した。 朝鮮が約束したこともない「CVIDに対する約束」を云々して、米日が「北朝鮮の非核化」を求めていくことを確認したのである。
上記の概念説明で同じ「非核化」でも「朝鮮半島」と「北朝鮮」では天地の差があり両立しえない。 米国が政策“見直し”で表現した「朝鮮半島の非核化」が真意ならば、米日韓で大きな見解の差があることになり、共同声明の発表は不可能だったはずだ。
G7外相会議(3日)でも日本の外相がCVIDを各国に訴え「北朝鮮の完全な非核化を目指すことで一致した」と伝えられる。 米国が軍事保護領で手先である日本を通じて朝鮮に対する敵意をむき出しにした形だ。
一方でブリンケン国務長官は韓国外相との会談では「朝鮮半島の非核化」を云々し、日本のマシコミは「北朝鮮の非核化」、韓国のマスコミは「朝鮮半島の非核」と報じる茶番が繰り広げられている。
敵対行為を覆い隠すための見掛けのよい看板
バイデン政権が文在寅政権の浅知恵を取り入れ「朝鮮半島の非核化」云々しているが、狙いは「北朝鮮の完全な非核化」にあることはあまりにも明らかだ。 下手の考え休むに似たり、で「朝鮮半島の非核化」と「北朝鮮の非核化」を使い分ける三文芝居は時間の無駄だ。誰を騙そうとしているのか、愚か極まりない。
朝鮮外務省のクォン・ジョングン米国担当局長は2日、バイデン大統領が議会演説で「深刻な脅威」、「外交と断固たる抑止」と述べたことを取り上げ、「米国が半世紀以上、追求してきた対朝鮮敵視政策を旧態依然として追求」していると非難した。 また同局長は「米国が主張する『外交』とは、自分らの敵対行為を覆い隠すための見掛けのよい看板に過ぎず、『抑止』はわれわれを核で威嚇するための手段であるだけである」と指摘、「米国がいまだに冷戦時代の視角と観点を持って時代的に古くて立ち後れた政策をいじりながら、朝米関係を取り扱おうとするなら、近い将来にますます対処しがたい困難な危機に瀕するようになるであろう」と警告した。
バイデン政権が下手な三文芝居まで繰り広げているのは、朝鮮を何としても対話の席に座らせ核抑止力のこれ以上の高度化を防ぎ「北非核化」を追求するためだ。
朝鮮は米国に敵対政策の撤回を求めており、朝米対話に興味を示していない。 対話の必要性に駆られているのは、核兵器の高度化を防ぎたい米国だ。 姑息な三文芝居で朝鮮を対話の席に座らせることができると考えるのはあまりにも愚かだ。(M.K)
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