M.K通信 (96)真実味のない「終戦宣言提案」は窮鼠のパフォーマンス

朝鮮に「東問西答」という四字熟語がある。

問の趣旨とは異なる、的はずれの答え、ピンとはずれの愚答を指す。

文在寅大統領がで「終戦宣言」を提案して、朝鮮側が金與正党副部長、リ・テソン外務次官などが立て続けに談話を発表したことは周知の事実だ。

しかし文在寅政権は、朝鮮側の談話にまともに答えようとせず、「東問西答」を繰り返しており、「終戦宣言提案」の真意を疑わせている。

「東問西答」「畑に蛤」

金與正党副部長は談話で文在寅政権に、二重基準と対朝鮮敵視政策を取り除くことを明快に求めその前提が満たされれば首脳会談もあり得ると述べた。

多少長くなるが、金與正党副部長談話の核心部分は次のような指摘だ。

「現存の朝鮮半島地域の軍事的環境と可能な軍事的脅威に対応するためのわれわれの自衛権次元の行動は全て威嚇的な『挑発』に罵倒され、自分らの軍備増強活動は『対北抑止力の確保』に美化する米国、南朝鮮式対朝鮮二重基準は非論理的で幼稚な主張であり、朝鮮民主主義人民共和国の自主権に対する露骨な無視、挑戦である。

南朝鮮は、米国をまねてこのような非論理的で幼稚な強弁を張り、朝鮮半島地域で軍事力のバランスを破壊しようとしてはならない。

公正性を失った二重基準と対朝鮮敵視政策、あらゆる偏見と信頼を破壊する敵対的言動のような全ての火種を取り除くための南朝鮮当局の動きが目に見える実践に現れることを望むだけである。

公正性と互いに対する尊重の姿勢が維持されてこそはじめて北南間の円滑な疎通が成されるであろうし、ひいては意義ある終戦が時を失わずに宣言されるのはもちろん、北南共同連絡事務所の再設置、北南首脳の対面のような関係改善の諸問題も建設的な論議を経て早いうちに一つ一つ有意義に、見事に解決されることができると思う」

文在寅政権を代弁していることで知られているハンギョレは、この指摘を「対米説得」のための、南への「協力」「支援要請」であると解説した。

米国、南朝鮮式対朝鮮二重基準は朝鮮の自主権に対する「露骨な無視、挑戦」であり、「朝鮮半島地域で軍事力のバランスを破壊しようとしてはならない」と断じ、その「火種を取り除」くことを求めた談話をどう解釈すれば、「対米説得協力要請」になるのか、まったく理解できない。 まるで「畑に蛤」だ。

この「対米説得協力要請」なる解説は、ハンギョレだけでなく中央日報などの保守系紙でも一致しており、文在寅政権のブリーフィングに基づいた解説であることは明らかだ。

マスコミだけでなく、青瓦台の公のコメントも「東問西答」だ。

朴洙賢青瓦台国民疎通首席秘書官は27日、談話の文脈を無視して、「互いに対する尊重」という一部の表現を切り取って、「北朝鮮は『自分たちの立場を公正に理解して接近してほしい』と要請している」と主張している。 我田引水も甚だしい解釈で、「畑に蛤」のような「東問西答」は、文在寅式問答の特徴で北南関係に大きな悪影響を及ぼしてきた。

 狙いは「高度化した・・・北朝鮮の非核化」

二重基準と対朝鮮敵視政策の是正を求める要求に、「東問西答」に明け暮れる文在寅政権の姿勢は、「終戦宣言提案」の真実味を疑わせるに充分だ。

文大統領は23日、同行記者団との懇談で、「北朝鮮の核がかなり高度化または進展したので、今は平和交渉とは別に、北朝鮮の非核化が行われなければならない」と述べている。

この発言は「終戦宣言提案」が「高度化した・・・北朝鮮の非核化」の突破口を開く目的でなされたことを示している。

文在寅大統領は「韓半島の非核化と平和プロセス」について重ねて表明してきた。 しかし、朝鮮半島周辺に展開され朝鮮を脅かしている米軍の核兵器については一言半句も言及したことがないばかりか、韓国に提供されている核の傘に対する約束を取り付けたことを自画自賛している。

米国の核と提供される核の傘はそのままに、朝鮮だけは武装解除せよとの一方的で、敵対的な要求だ。 文在寅大統領は、「韓半島の非核化と平和プロセス」とは言っているが、それを進める考えは毛頭なく、本音は「北の非核化」にあることは隠しようがない。

敵対姿勢を取り除くことを求める朝鮮側の要求にはそっぽを向いたまま“通信線の回復”を繰り返す文政権の姿勢も”対話”の目的が「北非核化」への関与の道を開くことにあることを示している。 首脳親書によってやっとの思いで”通信線”が回復したにもかかわらず、合同軍事演習を強行して再び断絶を招いたのは文在寅政権だ。

敵対姿勢を変えずに「終戦宣言」とは笑止千万であろう。

 危機感の裏返し

朝鮮の一方的非核化を執拗に追及する文在寅政権の姿勢は深刻な危機感の裏返しと言える。

韓国の歴代政権が目標にしてきた、ドイツ式統一、吸収統一は、朝鮮が「国家核戦力」を完成させることによって不可能になった。

さらに朝鮮による核抑止力の高度化は、吸収統一どころか、南の対米事大主義政権の存続に暗い影を投げかけており、韓国の極右はアフガニスタン事態を契機に危機感を一層募らせている。 朝鮮が米国との間で平和条約のようなものを結ぶ日には、「全てが終わる。 その日は米国が韓国を捨てる日だ」とは、韓国の親米反共右翼のオピニオンリーダーがアフガニスタンでの米国の敗北を受けて示した危機感だ。(WoW!Korea 8月24日)

アフガニスタンの傀儡政権のように、米国という支柱を失えば、韓国の親米事大主義政権も存続しえない。 にわかに信じがたいとする人も多いが、実際ブッシュ政権で国務長官を務めたコンドリーザ・ライスはアフガン事態直後の8月17日に「われわれは水準の高い韓国軍隊も北朝鮮を単独で阻止することはできないということを認めている」と指摘した。 また文在寅政権も歴代政権同様に「韓米同盟」を「安保の要」と認識、「韓米同盟強化」に心血を注いでいる。

終戦宣言は、極右が、米国が韓国を捨てる日になると危惧する、平和協定の入り口である。

文在寅大統領の「終戦宣言提案」は背に腹を変えられない窮余の一策だ。 この提案で朝鮮を一方的「非核化」のための交渉に誘引し、これ以上の核高度化を防ぎ朝鮮の武装解除を進めることにその目的があることは明らかだ。 「韓半島の非核化」といいながら、「北非核化」を追求し、朝米平和協定という表現は極力避け、一度もその内容を明らかにしたことがない「平和プロセス」を、お経のようにくり返しているのは何を物語るのか。

朝鮮の核の高度化は否が応でも朝米間の取引の可能性を増大させる。 タリバンとの交渉に、米国は傀儡政権を参加もさせなかった。

文在寅政権が「仲介者」を云々しながら自らの存在感を高め、朝鮮の核の高度化を止め「北非核化」を執拗に追及する理由は明らかだ。

北南和解、朝鮮半島の真の平和を願うなら何も国連でこれ見よがしに「終戦宣言」を大声で叫ぶ必要などあるまい。

窮鼠猫を嚙むという。

文在寅大統領の「終戦宣言提案」は窮鼠のあがきで危機回避のためのパフォーマンスに過ぎない。(M.K

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。