「積年の宿敵」から関係正常化へ、新たな朝米関係構築確認=朝米首脳会談

6月12日、シンガポールで朝鮮の金正恩国務委員長とアメリカのトランプ大統領が初めて相まみえた。 歴史上、初の朝米首脳会談だ。

両国首脳のこの出会いは、国際政治が大転換を迎え、新たな時代に突入したことを象徴する。会談では共同声明文が発表され、両首脳が署名した。

共同声明文は「金正恩国務委員長とトランプ大統領は、朝鮮民主主義人民共和国と米国の新たな関係の樹立と、朝鮮半島の持続的かつ強固な平和体制構築と関連した事案をテーマに、包括的で深みある真剣な方法で意見を交換した。 トランプ大統領は、朝鮮民主主義人民共和国の安全保障を提供することを約束し、金正恩委員長は、朝鮮半島の完全な非核化に向けた揺るぎない確固たる約束を再確認した。

新しい朝米関係を確立することが、朝鮮半島と世界の平和、繁栄に貢献することを確信し、相互の信頼関係を構築することが朝鮮半島の非核化を促進することができると認めながら、金委員長とトランプ大統領は、次のような合意事項を宣言する」とした。

声明文では①両国は平和と繁栄に向けた両国国民の願いを踏まえ、新たな関係を築くことを約束、②両国は朝鮮半島の持続的かつ安定的な平和を構築する為に努力、③4.27板門店宣言を再確認し、朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け努力する事を約束、④身元確認できた戦争捕虜、行方不明者の遺骨を直ちに送還することを含め、戦争捕虜、行方不明者の遺骨収集を約束するとした。

今回の朝米首脳会談を契機に、地球最期の冷戦の構図が終結に向かうことになる。

朝鮮半島は1945年8月に日本の植民地支配から解放されて以降、アメリカを中心にした「西側」とソビエト連邦を中心とした「東側」の「冷戦」の対決構造に巻き込まれた。 民族は南北に引き裂かれて民族分断・同族対立を強いられ、北の朝鮮と南の韓国は軍事境界を境に東西冷戦の象徴の地として70年の歳月を過ごさねばならなかった。

アメリカは韓国を朝鮮半島唯一の国家とし、朝鮮を政権として認めず孤立、圧殺を謀ってきた。

朝鮮は、隣接する中国とソ連に西側からの緩衝地帯として扱われ、1990年代に入りソ連の崩壊とともに「東側社会主義陣営」が消滅する中、独自の力で民族自主の旗印の下「ウリ(我々)式社会主義」を貫き自国を守ってきた。

2017年11月に国家核武力の完成を宣言するに至り、朝鮮は核保有国としてアメリカと対峙、直接対話することになった。 70年間、朝鮮を国家として認めず潰そうとしてきたアメリカが、朝鮮民主主義人民共和国を自主国家、対話相手と認めるに至ったのだ。

朝米両国は「新しい朝米関係」を築き、「恒久的で安定的な平和体制を構築」することに合意した。 すなわち、相互信頼を積み重ね朝鮮戦争の終結へと向かう意思を示した。

朝鮮戦争の終結は、朝鮮半島を取り巻く北東アジアと世界情勢と構図を大きく変える。 朝米関係正常化によって、「朝鮮の脅威」を根拠とする駐韓米軍と在日米軍が存在する意味がなくなる。

朝米関係正常化は、突き詰めれば国交樹立へと向かう。 アメリカが朝鮮に対する経済制裁を解いて、「米国式民主主義」を押しつけず、朝鮮の「ウリ式社会主義」を尊重すると言うことだ。

朝鮮が秘めた経済的潜在能力を考えれば、今後、世界各国から経済協力が入り飛躍的な経済発展を遂げる事が予想出来る。 既に中国、ロシア、EU等が動いており、アメリカもこれに加わることになる。

両国は「朝鮮半島の非核化」を確認した。 朝鮮半島の非核化とは文字のどおり、朝鮮が保有する核武力と韓国にある駐韓米軍の戦略核兵器を全て撤廃すると言うことにほかならない。 これは朝米双方の信頼無くして達成することができない。

「朝鮮半島の非核化」を達成するには、朝米双方が合意プロセスに沿って、行程を検証しつつ確認しながら段階的に進めることになるので、終わってみれば結果的に「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」になる。 これはアメリカが従来求めてきた一方的で短期的な行程ではなく、朝米が互いに行動対行動で進めるものだ。 そのためにはアメリカ側も「完全かつ検証可能で不可逆的な議会承認の条約(CVIC)」を守る義務がある。

朝鮮戦争時の捕虜送還及び失踪者遺骨発掘に関しては、尖鋭的敵対関係にあった過去にも朝米間で合意して行われた実績がある。

金正恩国務委員長は「歴史的な出会いで、過去を乗り越えて新たな出発を知らせる署名をすることになるでしょう。 世界はおそらく重大な変化を見ることになるでしょう。 今日のような、このような場のために努力して下さったトランプ大統領に謝意を表します。」と述べ、トランプ大統領も「金正恩委員長に感謝します。 密度ある時間を過ごし、誰の期待よりも良い結果を作ったと思います。 今後、より多くの進捗があるでしょう。 今日一緒にすることができて光栄でした。」と語った。

双方は会談結果を履行するため、後続交渉を可能な限り最も早い時期に開催するとし、来週に行うことを既に決めた。 朝米会談は以後も継続され、朝米両国の相互信頼と友好関係を築いて行くだろう。

世界中の注目を集めた世紀の会談は、世界平和への歴史的転換点となる。

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元記者。 過去に平壌特派員として駐在した経験あり。 当時、KEDOの軽水炉建設着工式で、「星条旗よ永遠なれ」をBGMとして意図的に流しながら薄ら笑いを浮かべていた韓国側スタッフに対し、一人怒りを覚えた事も。 朝鮮半島、アジア、世界に平和な未来が訪れんことを願う、朝鮮半島ウォッチャー。 現在も定期的に平壌を訪問している。