ちょっとした話題になっているドキュメンタリー映画「ワンダーランド北朝鮮」(原題:My Brothers and Sisters in the North)を観る機会があり、1日午後、上映会場である渋谷のシアター・イメージフォーラムを尋ねた。
2度の南北首脳会談が開かれ、史上初の朝米首脳会談の開催され「新たな朝米関係」構築のため双方が歩み寄るなど、朝鮮を取り巻く国際情勢が大きな変化を見せる最中の公開となり、全席指定のチケットは既に予約完売、当日販売は立ち見のみだった。
映画を制作したチョ・ソンヒョン監督は元は韓国の人だが、こ映画の撮影のためドイツ国籍を取得、事前取材のために4回、本編撮影のため2回、計6回訪朝している。
チョ監督自身がインタビュアーとなり、軍人たち、史跡地案内員、ウォーターパーク運営スタッフとその家族、公務員画家、トラクター運転手、縫製工場女工などの様々な人々と交流してゆく。 過剰な演出もなく普通に自然な営みと暮らしが映し出されてゆく。 画面の中の微笑ましい絵柄とはミスマッチな暗いトーンのBGMが気になるが。
制作年度は2016年だが、「北朝鮮悪魔化」が極度に達している日本の昨今、これほどイメージが「真逆な朝鮮」はないかもしれない。
南(韓国)出身の監督が「素顔の朝鮮」を知りたい、知らせたいと制作した映画だが、封切記念のトークショーでちょっとした「事件」があった。 7月1日2部のゲストが「問題」となったのだ。
いわゆる「北朝鮮ウォッチャー」で「某インターネット新聞編集長」のKという人物が予定されていたのだが、配給会社側は当初Kがどのような人物かをよく知らぬままキャスティングしたらしい。 それを知ったチョ監督が、「Kとでは建設的なディスカッションが出来ない」ので変更するよう配給側に強く抗議、Kの出演が取りやめとなった。
Kなる人物、実は自身が朝鮮を訪れたことはただの一度もない。 生の朝鮮を知らないのだ。 また、彼のメディアは裏の取れない二次・三次情報を元に「反北朝鮮キャンペーン」に勤しんでいる。 「朝鮮崩壊論」の立場に立っており、映画の趣旨とは真逆側の人物。 そのような人物に果たして建設的な意見が語れるだろうか。
配給側責任者に事の経緯を聞くと、Kという人物を事前によく知らずにチョイスしてしまったが、今回の一件を通じ反省し慎重を期すと語ってくれた。
TVをはじめとしたメディアには、未だ、「さも知ったかぶり」で「言ったもの勝ち」的な「北朝鮮専門家」が溢れているが、彼らの言うところの「北朝鮮」と現実の「朝鮮」の間にはかなりのギャップがある。 バイアスがかかった日本国内の報道を通してでは「素の姿」が非常に見えにくいのも事実。 しかし、日本政府の渡航禁止勧告にも関わらず、朝鮮に興味を持ち旅行して直に触れて知る人も増えてきている。
「朝鮮の素顔」に興味を覚える人が増え、歪み切っている「朝鮮観」が少しでも改善されることを切に願う。(Ψ)
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